アフリカの「華僑」は漢民族だけではない ウイグル人もエチオピアで働いている

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建設現場での経験を物語るような引き締まった体付きに日焼けした肌に四角い黒ぶちの眼鏡が特徴的だ。「ケニアに行こうと思ったのは給料がいいから。月に4000元(約6万3000円)稼げる。エチオピアも同じ額。中国では生活費もかかり、まったくお金が貯まらないが、アフリカに来ると会社がすべて出してくれるから稼ぎがそのまま貯金できる」と中国語で話す。けれども「ここでの生活は退屈だ。何にもないし、やることもない。中国に残してきたガールフレンドとはスマホでチャットしているが、いずれは中国で仕事をしたい」と話す。

建設現場で雇われている料理人リーが作った夕食 ©Kiyori Ueno

このような建設現場で働くために中国企業により雇われるのは労働者だけではない。料理人も雇われている。中国から来る労働者たちはインジェラなど現地の食べ物は食べないため、料理人が必要なのだ。中国人の料理人である32歳のリー・ナイフイは建設現場で働く中国人労働者や監督者のために1日3度の食事を作る。

例えばある日の夕食は緑野菜の炒め物、羊肉の煮込み、牛肉のチャーシュー、レタスの四川和え、タマネギとトマトの炒め物、わかめのスープ。食材はほとんどアワサから仕入れるが、コメはアディスで中国産を調達する。建設現場の敷地内には野菜農園もあり、中国野菜はここで作られている。

「世界を見るために来た」

建設現場では中国人がエチオピア人労働者の監督をし、時に一緒になって働いている ©Kiyori Ueno

リーは丸刈りの頭に180センチはある大柄な男性で、大きな炊飯器や中華鍋もあるキッチンでエチオピア人女性のアシスタント3人に身ぶり手ぶりで指示を出し料理する。エチオピアに来る前は吉林省のホテルで料理人をしていた。父親は故郷遼寧省の建設現場で働き、弟はやはりレストランで、母は小さなパン屋をしていた。

「エチオピアに来たのは父と弟がここの現場で働くことになったから。世界を見るために来た」と言う。父親はエチオピアに来る前、ケニアでやはり中国企業の建設現場に働きに出た。母親もケニアに渡り料理人として同じ現場で働いていた。リーは小学校を卒業後、14歳の時から料理人をしている。「他の仕事も色々やったが、この仕事が一番性に合う」と言う。「家族も一緒にいるし、ここでの生活は楽しい。このライフスタイルにもすっかり慣れたので、あと1、2年は続けたい」。

工事現場には、事業主である国営エチオピア電力会社の職員が時々工事の進捗状況を確認しに来る。現場に来ていたエチオピア人男性職員は中国企業の仕事の仕方について、「仕事の質が悪い時もある」と話す。「例えば、本来なら基礎部分のコンクリートを固めるだけでも丸1日かかるのに、仕事を早めるために5時間で動かしてしまったり、工事に必要な砂の種類を勝手に変えたりして報告しないこともある。使う砂は使用前にテストすることになっているのだが」。

中国企業のアフリカでのビジネスの仕方については、国際人権擁護団体から地元人を低賃金や劣悪な環境で働かせるなどしているとして批判されることもある。ザンビアの中国企業が経営する炭鉱では劣悪な労働環境で働かせられたとしてザンビア人炭鉱労働者による中国人経営者に対する抗議運動が起きたりしている。エチオピアではこのような抗議運動は今のところ起きていないものの、仕事関連の問題は常に起きる。

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