急上昇した「武蔵小杉駅の混雑」緩和策は? タワマン開発相次ぎ、輸送力が追いつかない
南武線の電車は、首都圏のJRでは珍しくなった6両編成。朝ラッシュ時は都心部の地下鉄や山手線並みの1時間あたり25本を運転しているものの、国交省の混雑率データでは、ピーク時1時間の輸送人員が4万1750人なのに対し、輸送力は2万2008人分にとどまる。
同線は都心部から放射状に西へ伸びる中央線や京王線、小田急線、田園都市線などをつなぐ縦軸となっていることから、もともと利用者は多く、JRもダイヤ改正のたびに列車を増発するなどの対策をとってきた。
最近では、車体幅が従来よりも15cm広い新型車両E233系に車両を置き換えることで輸送力の増強を図っている。輸送人員が増加する中で、2015年度の混雑率が前年度比5ポイント低下したのは新型車両の効果だろう。
だが、抜本的な対策といえる車両の増結はハードルが高そうだ。川崎市が2013年にまとめた「川崎市総合都市交通計画」では、交通環境整備の施策として「南武線の長編成化」も盛り込まれているが、同市によると「編成を伸ばすには課題も多いため、両数も含めてJRとは話し合いを継続している状態」という。同線には、ホームの両側が踏切となっている駅があるなど、車両の増結には施設の改良が必須となるためだ。
すでに編成の長い横須賀線の場合は増発が有効な混雑緩和策となるが、国交省の混雑率データではピーク時1時間あたりの運転本数が10本となっているものの、湘南新宿ラインも合わせれば16本、さらに特急の成田エクスプレスを加えれば、実際には上りホームに17本が発着している。現状でも一定の本数が走っていることから、こちらも一筋縄ではいかないのが実情だ。
駅の混雑には対応できるか?
横須賀線ホームの混雑についても改善の要望は出ている。神奈川県と同県内の市町村や経済団体などでつくる「神奈川県鉄道輸送力増強促進会議」は2015年度、朝ラッシュ時の混雑について「適切な混雑対策」をJRに要望しており、JR側は「実施可能なものから取り組んでまいりたい」と回答している。
同年には横須賀線側の新南改札で自動改札機が増設されており、改善への取り組みは見られる。だが、ホームへ上るエスカレーターの本数や、ホームそのものの広さは変わらないため、混雑することには変わりない。
武蔵小杉駅と関連路線の混雑は、東京臨海部の大江戸線勝どき駅などと同様、街の急速な成長に駅や鉄道が追いついていない一例といえる。武蔵小杉駅周辺の開発は今後も進み、人口の増加はこれからも当分の間は続きそうだが、鉄道や駅のキャパシティと周辺開発の調和も、今後の発展のひとつのポイントになるのではないだろうか。
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