フィンランドのワーママに「罪悪感」などない

ヘルシンキは夏休みの子どもに「無料で昼食」

無料の昼食に並ぶ子どもたち

6月から8月上旬の夏休み中は、小学生たちが午前中からやってきて自由に遊んだり、遠足やモノづくりなどさまざまな活動をする。そして毎日12時に、16歳以下の子どもであれば誰にでも、無料で昼食を出す。筆者が取材した「レイッキプイスト リニア」では、放課後に常時利用している子どもたちは50~60名だが、夏休み中の無料の昼食は1日平均150名ほどが食べにくるそう。需要のあるサービスであることがうかがえる。

「キャリアか家庭か」の悩みとは無縁

フィンランドで子育てをする女性たちに会って感じたことがある。それは、日本のワーキングマザーが直面する「子どもを預けて働くこと」に対する罪悪感や、「キャリアを取るか、家庭を取るか」といったような悩みがない様子であることだ。そこには3つの理由があると感じた。それは、「社会で子育てする文化」、「保育方法の主体的な選択」、「残業のない文化」だ。

1つ目の「社会で子育てする文化」。これは「レイッキプイスト」の成り立ちにも見て取れる。この仕組みは100年以上前からあるそうだが、「なぜそれがヘルシンキで生まれたのか」と職員に聞くと、「労働者の多い街だから、必要性が高かったのでは」という答えが返ってきた。みんなで働く親たちを支え、子どもたちが成長する環境を整えようという考え方が、その頃からあったのだろう。

フランゼニア保育園の副園長ラウラ・マケラさん

ヘルシンキでは保育園も見学した。フランゼニア保育園は、市内の子育て世帯が増えたため、昨年開園した新しい園だ。副園長のラウラ・マケラさんに「日本では、住民の反対で保育園が建てられないといったことも起きている」という話をすると「悲しいですね」と眉をひそめた。この園は住宅地にあり、園児300人を超える大規模なものだが、住民からの苦情はないそう。逆に「少子化だから、この地域に子どもたちの姿が増えることを住民も喜んでいる」とラウラさん。

フィンランドには保育園と幼稚園の区別はない。また、私立の保育園も存在はするが、9割方が自治体による公立園で、国の保育・教育基準に沿って運営されている。たとえばスタッフの数は、1〜2歳児4人に1人、3〜6歳児7人に1人(ヘルシンキ市の基準。全国的には8人に1人)と、日本の規定より手厚い。保育園やレイッキプイストなど、親が安心して頼れるサービスがあること、社会的にもそれが当たり前のこととして受け入れられているということは、母親が働き続けるうえで大きな後押しとなっているに違いない。

2つ目の「保育方法の主体的な選択」とはどういうことか。日本で待機児童問題が激化している都会では、保育園入園の可能性を少しでも高めようと受け入れ枠の多い0歳から保育園に預けて仕事に復帰する母親も少なくない。その結果、「本当はもっと一緒にいたい」という自分の気持や「あんなに小さいうちから預けて」といった世間の目に追い詰められる人も多い。

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