キヤノン、「プリンタ・コンデジ苦戦」の深刻度 ドル箱事業が不振、早くも2度目の下方修正

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一方、キヤノンが一眼レフやミラーレスカメラで使用する部品は熊本地震の影響を受けていない。熊本地震によって、他社がカメラ事業全体で部品調達に苦労しているのとは対照的だ。加えて第2四半期の売れ行きも前年並みに回復したことから、一眼レフやミラーレスカメラ市場が底打ちしたと見て、2016年の販売台数見通しを前年並みの550万台に引き上げた。

今後の成長に期待を寄せているのが、産業機器だ。特に有機EL製造装置の販売増や、ネットワークカメラ(監視カメラ)事業で買収したアクシス社が年間を通して寄与すると見込んでいる。「今年度の減収幅7.4%のうち、既存事業はマイナス10%。それに対して新規事業の伸び率は11%だ。新規事業の立ち上げは予定通り進んでいる」と田中CFOは話す。

買収企業の利益貢献に期待

しかし産業機器による利益貢献はまだ遠い。前期の131億円の赤字から今期は70億円の黒字化を見込むが、全体の利益に占める割合はまだ小さい。

東芝メディカルシステムズは、医療機器業界でグローバル大手の一角を占める

ただ、熾烈な入札競争の中、6000億円超で競り落とした東芝メディカルシステムズの買収動向によって、今期の業績はまだ大きく動く可能性がある。同社の買収を巡っては、現在、海外各国当局からの競争法に基づいた審査の最中のため、キヤノンの業績予想には含まれていない。

買収が完了すれば利益貢献が見込める。同社の2016年3月期の売上高は2913億円、営業利益は82億円。同期は先行投資がかさんだため、通常は200億円程度の営業利益を計上する実力は備えている。

こうした新規事業の成長によって既存事業の苦戦をカバーできるだろうか。キヤノンは正念場を迎えている。

(撮影:尾形文繁)

遠山 綾乃 東洋経済 記者

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とおやま あやの / Ayano Toyama

東京外国語大学フランス語専攻卒。在学中に仏ボルドー政治学院へ留学。精密機器、電子部品、医療機器、コンビニ、外食業界を経て、ベアリングなど機械業界を担当。趣味はミュージカル観劇。

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