コマツの「ジョイ社3000億円買収」は割安だ なぜ今が「逆張り」M&Aの好機なのか

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コマツの大橋社長は「今が好機と判断した」と語った(写真は2015年12月ラウンドテーブル。撮影:今井康一)

ジョイ社の強みとされるのが、主要な資源メジャーを含む、堅固な顧客基盤だ。自社の営業人員を使った「直販・直サ(サービス)」体制の下で、顧客に密着。本体の機械よりも利益率の高い部品・サービス事業が売上高全体の7割強を占めている。これが高い利益率を維持できる秘密であり、ジョイ社は厳しい環境下でも着実にキャッシュフローを創出してきた。市場回復で本領を発揮すれば、コマツ全体の利益率アップにも貢献しそうだ。

コマツが推進するICT建機による「スマートコンストラクション」でも、ジョイ社との協業が見込まれる。コマツは鉱山採掘現場において、無人ダンプトラックの運行システムをすでに展開するなど、IoT(モノのインターネット化)活用を強化している。同様にジョイ社もIoTの導入に取り組んでおり、将来的にシステムを統合していくことで現場データを大幅に拡充でき、生産性向上を顧客にアピールする大きな武器となりうる。

今回の買収発表後、初の取引となった7月22日金曜日の東京株式市場では、コマツ株は一時、年初来高値を更新したものの、その後は伸び悩み、終値は前日比14.5円安の2067円となった。

カギは需要回復とシナジー創出

結局のところ、買収の成否は、鉱山機械需要の回復、両社の営業基盤のシナジー効果にかかる。買収手続きがスムーズに進めば、ジョイ社は2017年度の上期半ば、もしくは下期からコマツの連結業績へ貢献が始まる。コマツの想定通り、2017年度から需要が上向けば、ジョイ社には10~15%程度の営業利益率をたたき出す実力はあり、コマツ全体の利益率にもプラスの効果をもたらす可能性が高い(ただし、のれん償却費用は除く)。

反面、中国リスクの再燃や鉱物価格の低迷などによって、資源メジャーの新規投資抑制が長引き、需要が想定通り回復しなければ、買収が業績の足を引っ張るリスクともなりかねない。

また外国企業の買収には、統合プロセスなどで困難がつきまとう。コマツは買収後も、ジョイ社のブランドや営業体制は維持する方針だが、組織と業務の改善のために両社がいかに協力し、シナジー効果をどこまで高めていけるか。グローバル感覚に定評のある、大橋社長の手腕が問われることになるだろう。

中村 稔 東洋経済 編集委員
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