コマツの「ジョイ社3000億円買収」は割安だ なぜ今が「逆張り」M&Aの好機なのか
鉱山機械の需要は、中国経済が絶好調だった2011年にピークを打ち、2013年以降はリーマンショック直後の2009年水準をも下回る低迷ぶり。中国減速や原油価格暴落などに伴い、鉄鉱石などの資源価格の暴落・低迷が長引いているためだ。
コマツ自身、2015年度、2016年度と、2期連続の減益を見込む主因の一つでもある。ニューヨーク証券取引所に上場しているジョイ社の株価も、2011年当時は一時100ドルを超えていたが、今年1月には一時8ドル台まで暴落した。今回決まった買収価格28.3ドルは、直近1カ月の平均値に約30%のプレミアム付きだが、それでも「底値買い」のレベルと言えるだろう。
需要面からも今が投資のチャンス
今後の鉱山機械市場の見通しについて、コマツは2015~2016年が大底と読む。2017年からは、世界の人口増や都市化率の上昇を背景とした主要鉱物の消費量増加とそれに呼応した生産量増加に伴い、需要回復を見込んでいる。2020年の市場全体の需要台数は、2015年の2倍強に当たる、年間約4000台と見ている(2011年ピークは7000台強)。需要面からもまさに今が投資のチャンスというわけだ。
大型買収を行うことができるまで、「財務体質も強化された」と大橋社長は強調している。2015年度までの前中期経営計画の期間に、借入金を目標通り削減し、今中計では「成長のための投資」を主体として掲げていた。今回の買収はその本格的な第1弾となる。コマツの今年3月末現在の現金同等物は1062億円に上るが、買収にはかなりの借入金が必要となる見込み。ただ、現在の超低金利は借り手にとっては有利な環境といえる。
大橋社長が挙げた買収理由には、ビジネスの補完性やシナジー効果もある。「コマツは(坑道を掘らずに地表から地下へ掘り進める)露天掘りの機械しかなかったが、ジョイは坑内掘りの機械に加え、露天掘りでも当社にはない大型の積み込み機を持つ」(同)。将来的に銅や金の採掘を中心に、露天掘りから坑内掘りへの移行が進むと想定され、ジョイ社買収でその流れに乗ることができる。
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