一流ホテルで浮く人はどこがズレているのか 「他者に不快感を与えない」が基本ルール

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また、ナイフとフォークを両手に持ち、それを「立てて」話しをするのは避けましょう。なぜかというと、ナイフは「凶器」なのです。立てると、相手に対して、刃を向けていることになってしまいます。

和食のマナーはやはり難しく、美しく食べるということが求められます。私にはそれをお話しする資格はありませんが、ただ、食べ終わった後に見苦しくないようにすることは心がけています。

テーブルマナーとは料理をおいしく食べる、そして一緒にいる相手にもおいしく食べてもらうために、不快な思いをさせない、そのためのルールです。

ですから、これはホテルでの食事だけの話ではありません。ぜひ日ごろから意識してみてください 。

ホテルごとに存在する「ルール」に素直に従ってみる

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最後に、ホテルマンの側からこっそりお伝えしたい、おまけのマナー知識をお話します。

ホテルはスモールコミュニティといわれます。多種多様な人が集まる、ある意味で開かれた空間です。しかし、室内でもありますし、さまざまな目的の方がいらっしゃいます。ですから、ホテルの中では、大声を出さないほうがよいですし、走るという行為も、避けていただければありがたいです。ハイクラスの大型ホテルのロビーは広いですから、急ぐときにはつい小走りになったりしますが、実はこれは厳禁です。

自分が宿泊客であったり、パーティの主催者であったりすると、ついつい自分の行動に甘くなりがちですが、周囲の人たち含めて、すべてがホテルにとってはお客様です。よろしければ、お客様としての「気遣い」も持っていただければありがたいです。ホテルにとっても、大切にしたいお客様となります。

さらに、大切にしたいお客様として、「ホテルごとのルール」に準じてサービスをうけることをよしとしていただく方は、マナーがよいともいえます。

たとえば、ホテルオークラで提供させていただいたサービスを、「オークラがやってくれた」といって、他のホテルにも強く要求するのは、 どうでしょうか。オークラはオークラの経営理念や運営コンセプトに基づいた「流儀」があり、他のホテルでは、そのホテルに基づいた「流儀」にのっとって、個性や差別化を図っています。

よろしければ、各ホテルの「おもてなしのルール」を素直に受け入れ、それを楽しんでみていただけたら。ホテルの個性や違いもわかり、皆様の滞在がよりポジティブに、さらに充実したものになると確信しています。

石原 直 国際観光学会会員

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いしはら ただし

立教大学経済学部卒業後ホテルオークラに入社。ホテルの情報システムの草分けとして活躍。システム開発室長として、他ホテルへシステムを販売するなど業界のシステム化に貢献する。取締役社長室長時代には都市ホテルとしては世界で始めてISO9001の認証取得を指揮。常務取締役・ホテルオークラ東京総支配人兼務、ホテルオークラ新潟社長、芝パークホテル社長・会長、藤田観光・副社長事業本部長、フォーシーズンズホテル東京総支配人を兼務する。この間15年にわたり立教大学社会学部、観光学部にて兼任講師、運輸省(現国土交通省)、経済産業省、エネルギー庁などで各種委員会委員を務める。
現在は、NPO法人観光情報流通機構理事長、国連CEFACT日本委員、目白大学、筑波学院大学で客員教授として、地方自治体の観光政策策定にかかわるなど、ホテル産業のみならず広く観光促進の分野で活躍中。国連CEFACT(貿易促進会議)では、アジアの国々と観光情報発信の標準化を促進する実証実験を行っている。国際観光学会会員。
著書に『ホテル旅館の情報システム』(中央経済社)、『接客サービスのマネジメント』 (日経文庫)などがある。
 

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