拉致問題はなぜ進展しないのか?-日朝協議の今後を考える-

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「拉致問題」を明記できなかった理由

日朝協議については、採択文書に以下のように記されています。

「日朝平壌宣言に従って、不幸な過去を清算し懸案事項を解決することを基礎として、国交を正常化するための協議を開始する。」

外務省の説明によると、「懸案事項」には、拉致も含まれるとのことです。そう解釈するのであれば、文書に「拉致問題を含む懸案事項」と書くべきだと考えますが、なぜ今回の交渉ではそれが実現できなかったのでしょうか。おそらく韓国を含めた他国の、拉致問題への関心が高くないことが原因ではないかと思われます。

ちなみに米朝協議については、以下のような文言があります。

「完全な外交関係を目指すための協議、テロ支援国家指定解除のための作業等を開始する。」

ここで注意すべきことは、「テロ指定国家指定解除」のための作業であることです。アメリカ政府が「拉致問題をテロ指定と関係ない」と考えた場合、拉致問題の解決がなくともテロ指定解除がなされ、金融資産凍結などが解除される可能性があります。

これから何が起きるのか

では、今回の合意で「北朝鮮が60日以内に実施する「初期段階の措置」の3点」を実施した場合、これから何が起きるのでしょうか。

まず、3月19日に、各国の外相が参加する第6回6者会議が開催される予定です。ここでは「初期段階措置に関する北朝鮮の対応」などが話し合われますが、すでにアメリカ政府は、金融制裁解除などを発言し始めており、わが国だけが北朝鮮支援や制裁解除に応じないといった状況が生じる可能性があります。

そして、初期段階の次に6者に求められる措置は以下のようになります。

1)まず、北朝鮮は、引き続き核問題に対応し、すべての核計画の完全な申告の提出及びすべての既存の核施設の無能力化等を行うことになります。

2)そして5カ国は、経済・エネルギー・人道支援を拡大します。具体的には、初期段階で提供した5万トンに追加して、重油95万トンを提供します(合計100万トン)。ただし、わが国は拉致問題の進展がなければ支援には参加しません(外務省の説明によると、北朝鮮に対する支援について、拉致問題の進展が見られるまで、我が国が参加しないことを米・中・韓・露は了解しているとのことです)。

繰り返しになりますが、「米・中・韓・露の4カ国に拉致問題の重要性をどれだけ理解してもらうか」、「いかに解決に向けて彼らに協力してもらうか」、「日本だけ孤立して、北朝鮮支援や制裁解除への対応を行わない状況をどこまで続けることができるか」の3点が、拉致問題解決に向けた重要なポイントになるはずです。

藤末健三(ふじすえ・けんぞう)
早稲田大学環境総合研究センター客員教授。清華大学(北京)客員教授。参議院議員。1964年生まれ。86年東京工業大学を卒業後、通商産業省(現経済産業省)入省、環境基本法案の検討や産業競争力会議の事務局を担当する。94年にはマサチューセッツ工科大、ハーバード大から修士号取得。99年に霞ヶ関を飛び出し、東京大学講師に。東京大学助教授を経て現職。学術博士。プロボクサーライセンスをもつ2女1男の父。著書に『挑戦!20代起業の必勝ルール 』(河出書房新社)など。個人ブログ にて毎日情報発信中

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