「世界トッププロが相次ぎリオ辞退」の後遺症 スポーツ界でゴルフが孤立するのが心配だ

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リオ五輪組織委員会会長が、相次ぐトッププロの辞退に「彼らはジカ熱のせいにしようとしているが、メディアは賞金がないからだと指摘している。ジカ熱はブラジルよりフロリダの方が深刻。彼らはフロリダではプレーしているのに」と語ったと報道された。辞退理由を真正面から非難できないゆえの、精一杯の皮肉。ただ、ゴルフ界以外の人たちはゴルフ界を「そう見ている」と思っていいだろう。

ゴルフがスポーツ界で孤立するのが心配だ。今回の男子トッププロの判断に「ゴルフはゴルフの世界だけでやっていけば」と、ゴルフをやっていない人たちに見られる可能性がある。ゴルフの世界的な人口は6000万人とも3000万人とも言われ正確には分からないが、日本ではプレー人口は720万人に減って大騒ぎになっている。

「ゴルフをやらないけどゴルフを見る」という人はそう多くはないだろう。日本の人口の数%の人たちの支持だけでゴルフ界がずっと続いていけるのだろうか。ゴルフ業界が新規ゴルファーを開拓しようと模索している。五輪はそうした未経験者がテレビで見て「やってみよう」と思わせるのに、もっとも効果的な大会だ。

世界ジュニアゴルフ選手権の取材に行った。6歳以下から15〜17歳の選手たちが日本からも多数出場した。何人かに五輪に出たいか聞いてみたら、一様に「出たい」といっていた。現在のトッププロが「メジャーが大事。五輪の価値観が分からない」という気持ちは分からないでもない。ただ、メジャーも五輪も実体験のない子どもたちにとっては、両方ともたぶんテレビの中の世界で、そう差を感じていないのだろう。

金メダルの報奨金1000万円は低くない

そうした子どもたちの未来の目標が、今回の出来事でつぶされるとすれば、世界のトッププロたち、中でも新ビッグ3といわれるデー、スピース、マキロイの役割は何なのか、疑問を感じる。かつてのビッグ3のニクラウスは、プレーヤーの辞退続出に「悲しいこと」「失望した」とコメントしている。

日本代表のユニフォームと日本プロゴルフ協会の倉本昌弘会長

ともあれ、リオで日本代表が金メダルをとってくれたら、今回生じたゴルフ界のイメージを日本では払拭できるかもしれない。メジャーに優勝したらゴルフ界の快挙だが、五輪経験者のテニス錦織圭が「(五輪は)日本全体がスポーツの力で変わっていける瞬間」と言う通り、五輪の金メダルは日本のスポーツ界の快挙になる。

日本ゴルフ協会の五輪対策本部が用意した報奨金は金1000万円、銀500万円、銅300万円。他競技に比べて低くはない。19日の会見で日本代表ユニホームも発表された。レプリカが近々、ネットやゴルフ場で販売されるという。サッカーの日本代表ユニホームのように、これを着て街を歩く人が出てくれると、ゴルフ界の五輪に対する考え方が少し変わるかもしれない。

赤坂 厚 スポーツライター

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あかさか あつし / Atsushi Akasaka

1982年日刊スポーツ新聞社に入社し、同年からゴルフを担当。AON全盛期、岡本綾子のアメリカ女子ツアーなどを取材。カルガリー冬季五輪、プロ野球巨人、バルセロナ五輪、大相撲などを担当後、社会部でオウム事件などを取材。文化社会部、スポーツ部、東北支社でデスク、2012年に同新聞社を退社。著書に『ゴルフが消える日 至高のスポーツは「贅沢」「接待」から脱却できるか』(中央公論新社)。

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