東急「電車定期でバスも」は混雑緩和になるか 途中駅でバスに乗り換え渋滞なく勤務地へ

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国道246号を渋谷に向けて走るバス。専用レーンが確保されているため渋滞の影響はあまりない

都心のターミナル駅前に多数発着する路線バス。だが、街中をきめ細かく結ぶ一方で、地下鉄などと比べて都心部の交通機関としての存在感は高くない。ICカード乗車券は共通利用できるようになったものの、鉄道網との運賃面での連携でいえば、東京都交通局が都営地下鉄と都営バスの連絡割引定期券を発売している程度だ。

一方、地方都市では今回の東急のキャンペーンのように、電車の定期券でバスにも乗れるシステムが以前から存在している。

例えば愛媛県松山市を中心に郊外電車と路面電車、バスを運行する伊予鉄道では、ターミナルの松山市駅を起終点に、郊外電車とバスが並行する区間ではどちらの定期券でも共通に利用できる「電車・バス共通乗車制度」を導入している。同社によると、郊外から中心部に向かうバスの定期券利用者が、渋滞を避けて途中から電車に乗り換えるといった利用があるという。

同種の共通利用定期券を発売している熊本市の熊本電気鉄道も、特に4月の熊本地震以降、道路の渋滞が激しくなっているため、このシステムを利用して電車に乗り換える利用者が多くなっているという。また、石川県の北陸鉄道は、共通利用定期券によって電車とバスの両方が利用でき、使える本数が増えることなどがメリットとして利用者に受け入れられていると話す。

鉄道とバス、もっと連携を

先日辞職した舛添要一前東京都知事は2014年6月の都議会での所信表明で、東京の最大の弱点は交通体系であるとして、「鉄道とバスの関係一つをみても、これまでは、両者を有機的に捉えるという発想がほとんどなかったのではないか」と指摘していた。

東京圏の交通では、今年4月に国土交通省・交通政策審議会の「東京圏における今後の都市鉄道のあり方に関する小委員会」が答申した鉄道網の整備指針など、鉄道の新路線プロジェクトに注目が集まる。だが、今回のキャンペーンのように、既存の交通機関の組み合わせでも利便性が向上したり、混雑緩和につながったりする方策は考えられそうだ。乗り換え検索サービスでも電車とバスを乗り継ぐルートが表示される時代、都市部でも鉄道とバスの連携はより積極的に検討されていいのではないだろうか。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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