佐藤優の教育論「本当に力がつく本の読み方」 『子どもの教養の育て方』特別編(その3)

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読書感想文のポイントはきちんと「写生文」を書かせること

佐藤:読書感想文を書かせるときに、重要になるのが「写生文」です。心の動きではなく、何かを見せてその情景が浮かぶような説明文を書かせます。なぜかというと、心の中の動きというのは、対象に即して何かを描写するという訓練には適応しづらいからです。

井戸:「写生文」を提唱したのは、正岡子規でしたね。

佐藤優(さとう・まさる)
作家・元外務省主任分析官
1960年、東京都生まれ。同志社大学大学院神学研究科修了。 2005年に発表した『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』で第59回毎日出版文化賞特別賞受賞。06年に『自壊する帝国』で第5回新潮ドキュメント賞、第38回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。『読書の技法』『獄中記』『交渉術』『外務省に告ぐ』『国家の「罪と罰」』など著書多数

佐藤:そうです。近代的な日本語が成立するために、写生文はどうしても必要でした。なぜかというと、日本語はどうしても韻を踏んでしまうからです。また、枕詞のようなセットパターンがある。「たらちねの母」とかね。それから、伝統的に「古池や蛙飛び込む水の音」みたいな韻文の形で物事を表現してきた。

近代になるとそういうあいまいなことではなく、もっとはっきり、合理的に描写するという、自然科学的な発想が必要となってきたのです。それが写生文です。それによって、近代的な散文が確立してきたわけです。

近代散文法がないと、産業は発達しません。軍隊を考えてみればわかります。歌では指示できないでしょう。

ただ、政治の世界の場合、今度は逆に歌みたいな話ですが。

井戸:そうですね。

佐藤:もう少し専門的にというか、力をつけたいというのだったら、感想文の中でその本の一箇所を正確に引用させるといいんです。それによって、自分の考え方とその本の中で書いてあることの区別をする癖がつく。自分の考えと人の考えを区別することは絶対に大事です。

井戸:人の考えなのか、自分の考えなのか、それが引用することによってわかるわけですね。

佐藤:そういうことです。

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