佐藤優の教育論「本当に力がつく本の読み方」 『子どもの教養の育て方』特別編(その3)

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給食は社会性を身に付けるための重要な教育

佐藤:小学校に入ってまず学ぶのは、人間関係ですね。社会の縮図みたいなものをここで学びます。でも、社会生活は幼稚園、もしくは保育園でも経験しているわけです。そこで一番の違いであり、大きなハードルとなるのは、何といっても給食だと思います。

井戸まさえ(いど・まさえ)
前民主党衆議院議員(兵庫1区)
1965年、仙台市生まれ。東京女子大学文理学部史学科卒業。松下政経塾9期生。東洋経済新報社勤務を経て経済ジャーナリスト、兵庫県議会議員を2期勤め、2009年より民主党衆議院議員として、衆議院内閣・法務・消費者特別各委員会理事を歴任した。5児の母。公式ホームページ

井戸:私のうちの小学3年生の子は、アレルギーではないのですが、牛乳が苦手で困っているのです。

佐藤:給食では、ある特定のものを食べられない子が出てきます。そのとき学校では、ケース・バイ・ケースを原則として認めない、つまり牛乳は飲まなくてはいけないという対応をするのですが、やっぱりケース・バイ・ケースで対処するしかないんです。

そこで親はどうすればいいかというと、子ども本位に考える。ここでいう子ども本位とは、子どもの社会性の問題と、子どもが受け入れられるギリギリの境界線で決めるということです。それは、親が一番わかることですから。

井戸:そうですよね。私のうちでは、嫌いなものでもひと口だけは必ず食べるという方針でやっています。

もう1つ給食で重要だと思うのは、食事というのは家の文化ですから、たとえば和食しか食べない家とか、肉を食べないとかいう家だってあるわけですよね。そうすると、初めての小学校という社会で、調理の仕方を含めて、新しいものに出合うということも多いわけですね。

佐藤:その意味では、給食制度というのは社会性をつけていく制度なわけです。

井戸:食べ方とか、行儀も含めてですね。

佐藤:そう。実は食事というのは、人間にとって非常に保守的だから、基本的には同じものを繰り返して食べている。しかし、そういう習慣を変えて、いろいろなものに関心を持つようにするという社会性を持たせる場所でもあるんです。

井戸:私の東京女子大学時代の親友は大学の寮に住んでいたのですが、クリスマスなどお祝い事のあるときには、寮生が一堂に会してかしこまりながら、フルコースの食事をするんだそうです。その友達は隣や向かいの人の食べ方を見て、「ナイフとかフォークの使い方がみんな違うということに驚いた。食事のマナーというのは人に不快を与えないためにあるんだとわかった」と言っていました。

なるほど、それは大事なことだなと思いました。子どものうちは、汚い食べ方や不快な食べ方をする子もいるけれど、それを見て自分はどうなのかと学んでいく場でもあるんですね。

佐藤:それも教育で、教育としつけがちょうど合わさっているところです。それから、栄養のバランスについて学ぶ場でもあります。給食は教育としても結構、重要なのです。

(構成:髙橋扶美/鈴木充、撮影:今井康一)

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