新型「大阪環状線」、山手線とは違うこだわり 車両デザインの東西対決、軍配はどちらに?

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E235系の特徴的なドット模様(撮影:風間仁一郎)

山手線E235系には元フェラーリのデザイナー、奥山清行氏がデザイン監修として参加している。奥山氏は新幹線から観光列車までJR東日本の数多くの車両デザインを手掛けている。秋田新幹線E6系の先頭車を上から見ると真っ赤な矢印のようなデザインが浮かび上がる。「日本の未来に向かって突き進んで欲しい」というメッセージを込めていると奥山氏は言う。

E235系にもメッセージがある。この車両のデザインコンセプトは「お客様、社会とコミュニケーションする車両」。つまり列車自体を情報端末に見立てて、乗客と情報のやりとりをする。乗客は液晶画面から大量の情報を取得し、列車は車内外の状態監視を行ない安定性向上につなげる。デジタルなドット模様はE235系の特徴を可視化したものといえるだろう。

JR西日本のデザインに秘めた思い

一方、323系は社外の著名デザイナーを起用せず、JR西日本と近畿車輛デザイン室が共同でデザインを進めた(ただし、国鉄時代から鉄道デザインに携わってきた木村一男・名古屋学芸大学教授もアドバイザーとして参加している)。

323系の車いす、ベビーカースペース(撮影:尾形文繁)

なぜJR西日本は奥山氏のような著名デザイナーに頼らなかったのだろうか。この理由について「著名な外部デザイナーを起用することが課題解決につながるなら、そういうこともあり得る」と、JR西日本車両設計室の大森正樹課長は説明する。「今回の課題はアーバンネットワークを継承した上で大阪環状線ブランドを実現すること。我々にはアーバンネットワークを20年かけて積み上げてきた自負があり、我々のノウハウで解決できると判断した」。

アーバンネットワークとはJR西日本の京阪神エリア在来線の総称。大阪環状線もその一部であり、外部デザイナーの起用によりアーバンネットワークと大阪環状線のイメージが拡散することを避けたというわけだ。とはいえ、実際にはJR西日本は別のデザイン社の提案も検討した。「我々は熟知しているがゆえに客観性がなかったり、自らの長所短所を見誤ったりすることもある。外から新鮮な視点で考えてもらうことも大切」(大森課長)。両案を検討して、結果として近畿車輛デザイン室の案が採用された。

323系の優先席には肘掛けがある(撮影:尾形文繁)

格好いい絵を描けば「良いデザイン」になるのではない。大森課長の言葉を借りれば、「ありとあらゆる課題を解決するのがデザイン」である。山手線も大阪環状線もそれぞれに固有の課題を抱えている。E235系と323系にはほかにもデザイン面での特徴がいくつもある。2つを乗り比べて、そのデザインの狙いがどこにあるのかに思いをはせると、新たな発見が得られるかもしれない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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