日本は「ヘリコプターマネー」の実験場に? 米国は原爆のように世紀の大実験をするのか

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その天才科学者とは、日本に最大のダメージを与えるため、原爆は京都に落とせと主張したノイマンだ。ノイマンはその後もコンピュータ開発など、米国の国益に貢献した。

ふと思ったのは、バーナンキ氏はオッペンハイマーなのか、ノイマンなのか、ということだ。

整理しておくと、バーナンキ前議長は2002年9月に理事としてFRBに入ってから、ヘリコプターマネーについて公式に触れたのは実はたった一度きりだ(同年11月)。2006年2月にFRB議長になってからはヘリコプターマネーを封印している。学者なら自分の考えを言えるが、公職の立場では別。ましてやヘリコプターマネーは、まさに原爆のような世の中を変えてしまうような話。でも今のジャブジャブな市場は既に先走っている。

参院選前、自民党は共産党を含む野党連携を野合と非難、与党候補は街頭演説で「日本経済の大事な舵取りを民共に任せていいのか」と叫んでいた。“民共”には、 資本主義を否定する響きを感じる。だが、もしヘリコプターマネーを導入するなら、それこそ資本主義の根幹を否定することにならないのだろうか。

米国でヘリコプターマネーが「無理」な理由とは?

筆者はストラテジストとして、米国の政治経済を観る立場にある。よって経済の仕組みが資本主義かどうかは本題ではない。その過程で上がるモノ、下がるモノのアドバイスをするだけだ。しかし米国ではその政治経済の歴史から、ヘリコプターマネーが無理なことは確信している。なぜか。そこはFEDの金融政策にも関連するので触れておく。

そもそも米国はアダム・スミスが国富論を発行した1776年に独立宣言をした国である。建国の父達は欧州で中央銀行の力が強大になり、一部のカルテルによる富の支配が確立するなか、米国での金融のあり方で意見が二分していた。皆が金融の魔力を警戒したのは同じ。ただそれでも中央銀行は必要だと考えたアレキサンダー・ハミルトン(初代財務長官)と、米国に中央銀行はいらないと主張したトマス・ジェファーソン(第3代大統領)からアンドリュー・ジャクソン(第7代大統領)一派が対立した。

結局、ジャクソン大統領は断片的に存在した中央銀行を完全に廃止した(1833年)。その後、米国は1914年にFEDが出来るまで、約80年間に渡り中央銀行が存在しない時代に突入する。この間、株式相場の大暴落は10回。当時の欧州株式のチャートと比べても、米国株の低迷は際立っている。しかしこの間に、バンダービルドの海運・鉄道、ロックフェラーの石油、カーネギーの鉄、JPモルガンの銀行、そして資本金がなかったフォードが、自分で造った車で賞金レースに勝ち、会社を興した。

次ページハミルトンとジャクソンの対立が再現した
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