「ベンチャーブーム」に漂う熱気と一抹の不安 過去に例のない資金調達だが選別も始まる
同社は最近、カナダのドローンを使ったデータ収集・解析サービス企業に投資した。ドローンがより一般的になれば、ドローンの管制システムが必要になるとみられ、その先行投資の意味合いがある。
また、TBSホールディングスは2013年秋に18億円のファンドを設立し、動画広告やビッグデータ関連ベンチャーに投資してきた。同社次世代ビジネス企画室の片岡正光担当部長は「AIやVR(仮想現実)など、放送のイノベーションにつながることにトライするには、出資の有無の差は大きい。華やかでも内実は赤字という会社もたくさんあり、出資によって業界のインナーになることで、その業界が伸びるかどうかをより深く理解できる」と話す。
製造業やインフラ系企業にCVCが広がっているのも最近の特徴だ。
産業用制御機器大手のオムロンは子会社のオムロンベンチャーズを2014年に設立、ロボットや農業関連ベンチャーに投資している。同社の小澤尚志社長は「多様かつ裾野の広い技術をすべて自前で開発するには、世の中のスピードの変化が早すぎる。適確なタイミングで適切なソリューションを提供するのに、全部自前でやるのは難しい時代になった」と狙いを話す。今年3月にはオムロン本体がリコー、三井住友銀行などと共同で50億円のファンドを組成した。
ただ、日本のベンチャー市場が隆盛を極める一方で、先を行く米国では気になる暗雲もたれ込め始めている。
「ユニコーン(一角獣)からユニコープス(死体)へ」
ベンチャービジネスの先進国、米国では昨年後半から盛り上がりを見せたベンチャーブームに陰りが見え始めている。企業価値が10億ドル以上の未上場企業「ユニコーン」は全米で200社近く存在すると言われているが、今年のテクノロジー系企業のIPO件数はわずかに2件にとどまる。
「規制当局はカリフォルニアにおける血液検査ビジネスを少なくとも2年間禁止した」
7月に入り、米メディアが報じたのが、一時企業価値の評価額が1兆円を超えた医療ベンチャー・セラノスに対する疑念だ。「女性版ジョブズ」の異名をとる経営者エリザベス・ホームズ氏率いる同社は、少量の血液を採取するだけで簡易に臨床検査ができるビジネスで名をはせたが、ここへきて企業の存続自体が危ぶまれている。
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