復活するか、道路特定財源? 国民ニーズに合った道路整備とは

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また、07年の「国民生活に関する世論調査」では、政治へのニーズは、1位が医療福祉などの改革、2位が年金など高齢者対策、3位が景気対策となっており、公共事業など環境整備は14位でしかない。また、自動車のヘビーユーザーと思われる20代の男性でも、同様に公共事業など生活環境整備は15位に過ぎない。

道路整備などの公共事業は、いまや国民の要求からはかけ離れたものとなっているのだ。

道路建設の優先順位をどうやって決めるかが重要!

もちろん、道路整備が不要というわけではない。が、その作るべき道路をどのようにだれが決めているのかが、大きなポイントだ。高速道路の場合、現在は、国土開発幹線自動車道建設会議(いわゆる国幹会議)が決めている。有識者が参加し、役所の思い通りにはならないことになっているが、現実には、会議の事務局を国土交通省が担っており、意思決定は国土交通省のシナリオに沿う形で行われている。そしてそもそも国道などは国土交通大臣つまり役所が決めることができる。結局は、地方の首長が国会議員や国土交通省に陳情を行ってできあがるというのが道路整備の実態だ。

国幹会議は今まで(03~07年)で3回しか開催されていない。そのうえ、1回1時間から1時間半だけの審議で、国土交通省のシナリオどおりに動いていると出席したある国会議員は言う。

国土交通省の官僚は、パブリックコメントの募集や、公聴会などで地域の要望を聞いていると説明する。しかし、これらは、実は法律上で保障された手続きではなく、国土交通省を縛るものではない。四国に行った際、車の運転手が建設中の高速道路を見ながら「高速道路よりも渋滞をなくすための橋をかけてほしい。住民の意見を聴かないでどんどん道を作ってしまうから、使わない道ができてしまうんだ」と語っていたが、こうした話は珍しくはないだろう。

ちなみに、イギリスには計画審査官制度と呼ばれる仕組みがあり、まず地方政府が住民のニーズを聞きとり、道路の建設計画を作り、審査官が調整することになっている。また、コストパフォーマンスの評価もルール化されており、どのような評価で道路建設を選択したかを明確に公表される。日本でも、このような制度を参考にすべきだろう。

道路による将来負担

道路整備が抱える負債も大きな課題だ。高速道路は借金によって建設したため、道路公団が民営化されるときに44兆円の負債があった。また、その他の道路や橋を建設するための借金(建設国債)は、240兆円。これはどんどん増えている。これらの借金は40年で返済する仕組みとなっており、つまり若い世代が返さなければならない。

建設費の借金返済だけではない。道路の維持費も巨額だ。国土交通省の予測で2030年には現在の道路の維持・更新費だけで年間8兆円にもなると言う。さらに無駄な道を作ればその維持費も増え、結局、若い世代がその負担を背負わなくてならなくなる。

一般財源化のみならず、道路整備の仕組みや将来の負担についても議論を深めるときだ。

◆増え続ける借金
建設国債は
1990年 100兆円
1995年 140兆円
2000年 200兆円
2007年 240兆円
と増加!

ふじすえ けんぞう
1964年熊本県生まれ。東京工業大学卒業後、通産省(現・経産省)に入省。マサチューセッツ工科大学大学院、ハーバード大学大学院を修了。99年、東京工業大学で博士号取得。東京大学講師、助教授を経て04年参院選初当選。

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