「ズルい生活保護者」には働けないワケがある 人が「貧困」に陥る3つの無縁と3つの障害

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K君が子どもの頃、ゴミため状態の部屋の窓際には仏壇にも入れられていない裸の位牌が置いてあり、祖父はいつも季節の花を一輪挿しに供えていたという。

「でもケガしてから何十年もまともに働いてないヤツに、俺は同情はできないですよ。アル中だし、くだんねー盗みで何回かマエ(前科)あるし。大体汚い。酒に酔って寝ながらウンコ漏らして気づかないヤツなんか、俺のジジイ以外、見たことないですよ」

では、母親についてはどうか?

「母親に関しては憎んでるとかないんですよ。本当にダメな女で、しょーがない人だなとは思ってる。っていうのも、ウチの母親は空気が異様に読めないヤツで、性格ひん曲がりまくってて、思ったこと全部口に出しちゃうんです。それで、どんな仕事についてもすぐに女の上司とか同僚ともめたり、それで男の同僚とか上司とすぐにセックスして、職場追い出されるんです。そんでまた別の男に頼って。笑えるぐらい同じパターンで仕事が続かないで、いっつも文句ばっかり言ってる。男にDV食らうのも、俺があいつの彼氏だったら殴りたくなるのもちょっとわかるんです。ほんと空気読まないからあいつは……、言ってることはいつも正論なんだけど……。今はなんか俺の知らない人と結婚して、仕事はデリヘルの受付電話取ってるらしい。5年会ってないけどメールは来ますよ」  

第三者からの情報だけで人物像の特定はできない 

さて、この祖父と母。当初K君の言葉を通じて聞きかじった段階とは、ずいぶんと印象が変わってきたではないか。母親については、ソーシャルスキルが足りず、孤立を招きがちなパーソナリティの持ち主。空気が読めず融通も利かずに正論を主張し続けるというのは、実はK君にも同様なところがあって、遺伝だなあと思う。程度はわからないが、大人の発達障害的な気配も感じさせる。

祖父に関しては、連れ合いの死とケガが失職とその後の貧困の入り口だったというが、そうなる前は登山やスポーツ(バレーボール)が好きな職人で、機嫌のいいときの登山話などは、K君がせがんで聞くほどに面白かったという。

仕事は左官工であった。出身は九州の貧しい山村で、親族とは年賀状の付き合いもなかったという。

ここまで聞き取って、学べることは、まず当事者自身ではない第三者からの聞き取りで、単純に人物像の特定はできないということだ。K君は初回の取材から一度もウソを言ってはいないと思うが、粘って聞き込んでエピソードを深めるたびに、レンズの先に結ばれる人物の像はどんどん変化していく。  

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