孫社長の後継者「アローラ電撃退任」を追う 匿名投資家による疑惑の指摘は主に7項目

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特にスーパーセルは2013年に出資したばかり。バイ&ホールド(長期保有)の投資家として知られる孫社長は、スーパーセルのイルッカ・パーナネンCEOに「長期的な関係」であることを明言していた。2兆円近い怒涛の売却は、これまでの孫社長からは想像もつかないことだった。

二つ目は、3月の新会社設立である。ソフトバンクは持ち株会社だが、その下に2つの中間持ち株会社を新たに配置した。国内事業統括会社と海外事業統括会社の2つで、海外統括のトップにニケシュ氏を据えた。

これは孫社長からニケシュ氏への数年先を見据えた禅譲の下地作りとみるのが自然だ。つまり、こうした人事の数カ月後に、さらにその上の持ち株会社の社長にニケシュ氏を据えることは通常ない。数年間様子を見て、中間持ち株会社トップとしての実績に応じて昇格させるものだからだ。

3月の退任なら理解できるが…

株主総会の冒頭、「ミスター孫は若返った。これからもサポートしていく」などとあいさつしたニケシュ氏(撮影:今井康一)

会社側はニケシュ氏の退任理由について、「(孫社長とニケシュ氏)両者の時間軸のずれを踏まえ、次のステップに進むことになった」と説明している。

もしそれが理由だとすれば「ずれ」が浮き彫りになったのはこの新会社設立構想が伝えられた段階だろう。つまり、ニケシュ氏が3月のタイミングで辞任していれば「時間軸のずれが決定的だった」という解説には説得力がある。だが、実際には辞任していない。

一方で、この中間持株会社体制は発表後にあまり進展がみられない。どの子会社をどちらの傘下にするかは孫社長に一任され、年末までに決めることになっているが、海外統括の傘下に1社(3月20日)、国内統括に数社(4月1日)と発表されてから、その後は発表がない。

三つ目は特別調査委員会である。ソフトバンクは、1月に届いた匿名投資家からの書簡を受けて、2月に社外取締役ら独立役員で構成される特別調査委員会を設置していた。調査対象はニケシュ氏である。

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