なぜBuzzFeedはTumblrにこだわるのか そこにある流入・収益以上の価値

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バズフィードは約12個のタンブラーサイトを管理している。ホルダーネス氏は2007年に開始されたバズフィードメインのものと、「奇妙な」コンテンツに特化したサイトのもの、そしてフード関連に特化した「テイスティ(Tasty)」のものを含めた、複数のタンブラーサイトの担当だ。フルタイム業務としてタンブラーに取り組むようになる前、ホルダーネス氏の仕事はメインサイトに1日に3回ほど投稿する程度だった。いまでは1日の投稿数は、10回に上る。

繰り返される試行錯誤

バズフィードの「テストして、学ぶ」アプローチは、タンブラー上でも変わることはない。ホルダーネス氏は、ほかのプラットフォームでのパフォーマンスが良いバズフィードのコンテンツをタンブラー上で流用する。まだそれほど広くは知られていないエディトリアルのプロジェクトや、タンブラー上の多くのアクティビストコミュニティにアピールできそうなコンテンツといったものだ。アメリカでは2月が黒人歴史月間となっているが、この2月にタンブラーへ投稿された黒人歴史月間のポストは15万ノート(「いいね!」やブログ投稿、コメント投稿など)を集めた。

タンブラーでのビデオはまだ実験段階だ。ほかのプラットフォームでは、どんどんと人気になってきているが、タンブラーではどのようにビデオを使うのがベストなのか、ホルダーネス氏はまだ探っている最中だという。ビデオのクオリティとコンテンツによってはYouTubeの埋め込み動画を使うこともあれば、短い動画にはタンブラーの自動再生ビデオ機能を使うこともある。もしくはBuzzFeed.comに飛ぶリンク付きでスクリーンショットやGIF画像で載せることもある。

「もしもウィークリー特集として身体醜形障害(自分の身体の美醜に極度にこだわってしまう症状)を扱ったとしたら、私はいくつかの投稿には(不快な感情や記憶を思い起こす可能性があるとして)トリガー警告のタグ付けをするだろう。それか、もしもスタンフォード大学のレイプ事件についてのビデオコンテンツを扱ったら『レイプ』としてタグ付けをすることでオーディエンスに(予期せぬ)ショックを与えないようにするはずだ。(タンブラーにおける)人々の感覚は非常に深いものであり、タンブラーは安全な場所であるととらえられている。私はそこに敏感でありたい」と、ホルダーネス氏は言う。

タンブラーはトラフィックを大量に集めるプラットフォームではない。そこでの成功基準はどれだけ多くのノートが寄せられたかだ。タンブラーのメディア運営をしていたマーク・コートニー氏は、タンブラーのオーディエンスは非常に「良い目をもっている」という。たとえばツイッターでは、人々は自分が読んでもいない記事をリツイートすることで知られている。しかしタンブラー上で誰かがリブログ(ブログの投稿を引用すること)した場合、それはただのジェスチャーではなく、「もっと意義深いものである」と、コートニー氏は説明した。

バズフィードの非常に優れたポストは10万ノート以上を集める。それが発生するのは月に2、3回だ。最近では「キャプテン・アメリカ Q&A」が57万ノートを集めた。しかし、ホルダーネス氏によると、目標はただノートの数が増えることだけではないようだ。コメントの内容にどれだけ意義があるかにも注目しているという。

なぜならタンブラーは、コミュニティにおけるエンゲージメントを育てる方法としても、存在しているからだ。ホルダーネス氏のもとに届くメッセージは、1日に何百通にも上る。そのすべてに返答することはできないが、1日に25通は返すという。

「私たちは文字通り世界中の人々からメッセージを受け取る。私たちがジカ熱についてレポートをしたことがキッカケで、ブラジルの人々からメッセージが送られることもあれば、ブレグジット(Brexit:イギリスのEU離脱問題)の報道を受けて、イギリスからメッセージが来たりする。ほかのプラットフォームでは、こういったオーディエンスにリーチするのは難しい」と、ホルダーネス氏は語った。

Lucia Moses(原文 / 訳:塚本 紺)

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DIGIDAY[日本版]編集部

2015年9月1日にローンチした「DIGIDAY[日本版]」を運営。同サイトでは米「DIGIDAY」が日々配信する最新のデジタルマーケティング情報をいち早く翻訳して掲載するほか、日本国内の動向についてもオリジナル記事を配信している。メディアジーンが運営

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