(第42回)<弘兼憲史さん・後編>子どもは甘やかさず、格差を自覚し生き方を学ばせろ

●格差で学ぶ自分なりの「生き方」

 格差がないようにするというのはやはりいかがなものか、と。めちゃくちゃな格差はよくないと思いますが、ある程度の格差はむしろあった方がいいと思います。世の中にはできるやつとできないやつがいて、足の速いやつと遅いやつ、歌のうまいやつと下手なやつ、勉強のできるやつとできないやつ、いろんな人間がいるということを認識させる必要があると思います。あまりにも平均教育というか、極端なたとえでいえば、運動会でトップの子が足踏みをしてみんなが来るのを待って全員でゴールするとか、これはもってのほかです。そんな教育をしていたら、世の中に出て人間には格差があるんだということを実感した時点で完全に挫折します。
 子どもの頃から格差を自覚した方がよいと思うのです。僕の子どもの頃も喧嘩の強いやつと弱いやつがいて、自分はこのくらいだと理解していました。腕力のヒエラルキーの中で弱いやつは弱いなりに、どう生きていくかという生き方を学ぶわけです。

 それから、現在は子どもにあまりにも快適な空間を与えすぎているのではないかと思います。僕らの頃は子ども向けのエンターテインメントなどなかったから、ちょっと背伸びをしてタバコ吸ってみたり、早く大人になって、楽しいことをしたいと思っていました。今は、ゲームにしたって、幼児向けのゲームもあれば、小学校高学年向け、中学・高校生向けのゲームもある。細かくセグメントされていて、それぞれの楽しさがある。だから、本来なら早く大人になりたいと思うべきなのに、大人になりたくない子どもがたくさん増えていると思うのです。大人のほうが楽しいぞと思うためには、むしろ、子どもってつらいんだと思わせるくらいのほうがいいのです。

(取材:田畑則子、撮影:戸澤裕司


弘兼憲史(ひろかね・けんし)
山口県岩国市出身。1947年生まれ。漫画家。
早稲田大学法学部卒。松下電器産業入社。広告宣伝部に勤務の後、漫画家としてデビュー。課長からスタートした『島耕作』シリーズや、中高年の恋愛を描いた『黄昏流星群』など数々の作品を執筆し、漫画賞を受賞。ラジオ番組のコメンテイターを務めるなど、多彩な才能を発揮し活躍。
2007年紫綬褒章受章。
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