サニックス、3度目の希望退職で社員6割減へ 太陽光バブルに踊った「夢の宴」の後始末

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2012年7月、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)が始まると、太陽光発電の設備導入市場は空前のブームを迎えた。この流れをとらえてサニックスは、主力事業を「シロアリ防除」から「太陽光発電設備の販売・施工」へ転換。人員を急膨張させ、業績拡大を図った。

しかし、2014年秋に九州電力が太陽光発電の接続を突然制限する「九電ショック」がサニックスのホームグランドで勃発。サニックスが強い西日本の電力会社にも同じ動きが伝播し、それに続いて太陽光発電の固定買取価格を政府が連続して引き下げた。

これで太陽光発電バブルは一気に崩壊。その速さを経営陣は完全に読み間違えた。これだけ人を削るから大丈夫、と株式市場を安心させるかのように経営陣が人員削減の手を繰り出すと、太陽光発電市場の縮小がその先を行く。

メインバンクの支援に「確約されたものはない」

業績は2014年3月期の売上高842億円、営業利益45億円がピークだった。2015年3月期は、売上高こそ956億円へ増えたものの、営業利益は31億円の赤字に転落。2016年3月期は売り上げ619億円へ35%減少、営業利益は必死のリストラにもかかわらず22億円の赤字が続いた。

四半期ごとの業績下方修正で、市場の不信感も募っていった。2013年7月に1727円をつけた株価は、今や100円台に落ち込み、低迷が続く。

その中でサニックスは今2017年3月期を初年度とする3カ年中期経営計画を策定し、信頼の回復に懸命となっている。最終2019年3月期の太陽光発電事業の売り上げ規模は前期比4割の172億円まで落とす。過去のような甘い前提は置かないというわけだ。

コストを極限まで切り下げ、わずかではあっても利益を捻出できる収益構造に転換するのが新中計の肝だ。無惨に頓挫した、壮大な拡大路線(2017年3月期に売上高3300億円、営業利益340億円の目標を掲げていた!)の前中計とは180度転換した、完全な縮小均衡策である。

コスト削減策は、ありとあらゆる手を繰り出す。冒頭に挙げた人員削減もその重要な柱だが、ほかにも役員の報酬カット継続、全社員の給与カット、店舗の統廃合、土地や資産の売却といった具合。

人員を半分以上減らしてまで生き残ったとしても、かつての成長を取り戻すエネルギーは残っていない。祖業の白アリ防除への再注力を打ち出すが、近年、白アリ被害は減少傾向にあり、市場規模は縮小傾向。今後についても、少子高齢化を考えれば成長余力は限られている。

2016年3月末の自己資本は26億円で、自己資本比率は約8%と薄い。今2017年3月期に、前期や前々期のような40億円台の最終赤字に陥れば、債務超過に陥りかねない。

決算短信には、「継続企業の前提に関する重要事象等」が付されている。さまざまなコスト削減策は「進捗の途上にある」ことから、メインバンクからの支援・協力について「理解は得られているものの、現時点で確約されたものがない」という記述になっている。

時代を読み誤ってきた経営の軌道修正に残された時間は少ない。

大西 富士男 東洋経済 記者

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おおにし ふじお / Fujio Onishi

医薬品業界を担当。自動車メーカーを経て、1990年東洋経済新報社入社。『会社四季報』『週刊東洋経済』編集部、ゼネコン、自動車、保険、繊維、商社、石油エネルギーなどの業界担当を歴任。

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