駅のホームと車内を「酒場」にした京阪の思惑 中之島線の知名度向上と利用増につながる?

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おでんを販売する車両の「野天席」

イベント開催の背景には、中之島線の利用者数が当初予想より伸び悩んでいることも挙げられる。同線は2008年11月に開業したが、1日の平均利用者数は当初見込みの約7万2000人を下回る3万人程度に留まっている。吉城さんによると、利用者数はゆるやかな増加傾向にあるものの、さらなる増加に向けては「(中之島線の存在を)知ってもらうことがまず大事」。インパクトのあるイベントで路線の認知度を高めたいという狙いもある。

吉城さんによると、企画は2015年の秋ごろからスタート。当初は中之島で冬期に行われるイルミネーションのイベントに合わせた開催を検討していたが、今回はその前哨戦ともいえる「ボリューム0(ゼロ)といった意味合い」(吉城さん)で、6月の開催となった。雨が降る梅雨時でも天候に左右されないという、地下駅ならではの特性も活かしている。

認知度アップの起爆剤になるか

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通常のロングシートの車両も、席にクッションを置きテーブルやドラム缶を配置するなどで「飲み屋」の雰囲気だ

来場者の声を聞いてみると「ふだんは(中之島線は)使わないけど、これがあるから来た」という人や、京阪沿線外からの来場者も多く、外国人観光客の姿もちらほら。イベントの開催を知らない人が駅員に何事かと尋ねる様子も見られた。

今後については「今回の反応を見て、好評を頂ければさらに進化させて続けていきたい」と吉城さん。一日の仕事を終えた後、喉を潤す一杯のビールが明日への「活力」になるように、ホームに現れた「酒場」が中之島線の知名度アップ、利用者数増加に向けた「起爆剤」となれるかどうかが注目される。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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