九州新幹線が大地震から早期に復旧した理由 致命傷を負わない「最新の耐震基準」の仕組み

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九州新幹線は、最新の耐震基準で建設されていたことが早期復旧を可能にした(撮影:梅谷秀司)

完全復旧にはこのように時間がかかるにしても、当面は全線が開通して、山陽区間との乗り入れ本数も着々と増えていっている。被災直後には、復旧のメドは立たないなどという報道もあった中で、これだけの早期復旧が実現できたのはどうしてなのか?

とりわけ2011年の東日本大震災で大きな被害を受けた東北新幹線に比べて、早期復旧が可能になった原因は何か。兵藤部長によれば、九州新幹線が最新の耐震基準で建設されていたということが奏功したという。

特に、阪神淡路大震災を受けて策定された厳しい基準のために、高架柱や電化柱の大きな損傷がなかったということが大きかった。高架橋に関しては調整桁のズレが一部で発生したし、高架橋柱にクラック(ひび割れ)を生じた箇所もあった。だが、それ以外には新幹線の主要な構造物には大きな損傷は受けなかったのである。

このために「運転そのものに支障する損傷」は極めて限られていた。例えば軌道の損傷ということでは、本線においては脱線による損傷があっただけであり、これが復旧をスピードアップすることにつながっている。

防音壁の落下対策が課題に

一方で、熊本駅構内ではエスカレータの破損、窓の損傷、また保守基地におけるクレーン落下などの事故があり、今後に課題を残した。特に大きな課題としては、被災した全長40キロの区間において「防音壁の損傷・落下」が著しいということだ。高架橋の側壁を兼ねる防音壁が落下して、その部分だけ空隙の生じているのを「針金をバツ印に結ぶ」応急措置が必要な箇所が、熊本県内では多数発生した。

この問題に関しては、そもそも防音壁とは防音目的のものであり、いたずらに強化をしてしまっては、高架橋全体に必要以上の荷重をかける結果となる。そこで兵藤部長によれば、防音パネルの固定方法に工夫をして落下を防ぐような機構の開発が課題になっているとのことであった。

いずれにしても、阪神淡路大震災以降、強化された耐震基準で建設されていたということが、被害を最小限にとどめ、早期復旧を可能にしたということは間違いないだろう。だが、問題は、それでも脱線事故が起きてしまったということだ。この脱線事故に関して、原因や再発防止に関してJR九州としてはどのように考え、どのように取り組んでいるかについても伺ったので、こちらについても稿を改めてお話ししたい。

冷泉 彰彦 作家

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れいぜい あきひこ

1959年生まれ。東京大学文学部卒。米国在住。『アメリカは本当に「貧困大国」なのか』など著書多数。近著に『「上から目線」の時代』(講談社現代新書)。

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