赤字のカジノ事業で儲けたトランプの錬金術 先週NYタイムズでもっとも読まれた記事
一方でトランプ自身は多額のカネをカジノ会社から受け取っていた。取締役会は彼の言いなりだった。本紙の調査では、経営不振だったにもかかわらず会社から100万ドル以上のカネを引き出したこともある。
トランプは自分はうまいタイミングでアトランティックシティから撤退したと言っている。だが記録からは、同市でのギャンブル産業のピークが過ぎてからも何年間も彼はカジノ経営にしがみつこうとし、ついには投資家から経営から手を引くように求められたという流れが見て取れる。
トランプとのカジノ業界との関わりを好意的に思い出す人々もいる。彼のショーマンシップや地元振興のために投じた多額のカネ、そしてカジノからのさらに多額の税金を評価してのことだ。
カジノ建設を手伝った中小企業にも打撃
「会社にとっては偉大な人物だった」と語るのは、2004年の破産の際にトランプのカジノ運営会社の社長を務めていたスコット・バテラだ。「経営も知名度もマーケティングも、本当に見事だった」
だがトランプのせいで痛い目に遭った人々もいる。
カジノコンサルタントで、リゾーツ・インターナショナルのカジノ部門の重役だったスティーブン・ノートンは言う。「破産によって彼は債権者のカネを無駄にしたばかりか、タージ・マハル建設で力を貸してくれた多くの中小企業に被害を与えた」
ペンシルベニア州に住むベス・ロッサーは、トランプがタージの破産申請をしたせいで、父が営んでいた建設会社があやうく潰れるところだったと語る。債権回収には3年を要し、おまけに返ってきたカネは本来支払われるべき額の3割に過ぎなかった。