赤字のカジノ事業で儲けたトランプの錬金術 先週NYタイムズでもっとも読まれた記事
だがニューヨーク・タイムズがトランプのカジノ運営会社に関する規制当局の審査記録や裁判記録、証券取引委員会(SEC)への報告書を精査した結果、彼のカジノ事業は失敗の連続だったと言っても差し支えないことが判明した。アトランティックシティーのギャンブル産業は、長期的なビジネス環境の変化から低迷に陥った。自分のカジノ事業も同じだというのがトランプの言い分だが、実際には同市が不況に陥る前からトランプの事業はうまく行っていなかった。
だがカジノの経営不振とは裏腹に、トランプ自身は多額の金を手にしていた。自身の懐からはほとんど出資していなかったし、個人的な債務をカジノに回したり、給与やボーナスその他の名目で多額の金を受け取ったりしていたのだ。彼の経営失敗のつけは、トランプの経営者としてのきゅう覚に期待した投資家などの人々に回された。
4度にわたって破産法の適用を申請
4月下旬以降の本紙との3回にわたるインタビューにおいて、トランプは多額の債務と売上の伸び悩みがカジノ経営の足を引っ張ったことをおおまかには認めた。
細部まで覚えていないこともいくつかあったが、本紙の分析に異を唱えることはなかった。彼は繰り返し、重要なのはアトランティックシティで事業展開していた時期に、多額の儲けをあげたことだと強調した。
トランプは借金でカジノ帝国を築き上げた。その際の金利は、事業が成功する可能性などほとんど見込めないくらいに高かった。規制当局にはそんな借金などするつもりはないと言っておいてだ。
トランプのカジノ運営会社は4度にわたって破産法の適用を裁判所に申請し、そのたびに債権者に対し、返済額がゼロになるよりはましだろうと債務の軽減を求めた。だが結局はさらに金利負担の高い債務を背負い込こんでは裁判所に駆け込むことを繰り返した。
1990年代前半には債務の繰り延べによりかろうじて破産を回避。2度目の危機は株式市場に上場してリスクを株主に移すことで回避した。
だが、借金をすべて返済するだけの客を集めることができなかった。他のカジノが繁盛していた10年くらいの間も、トランプのカジノの業績は低迷し、毎年多額の赤字を出した。株主と債権者がこうむった損失は15億ドルを上回る。