「松山」と「錦織」の五輪意欲が大きく違うワケ プロゴルファー「辞退問題」を解消する方法

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いまや世界中どこでもなにかしら危険な病気はある。ゴルフは5、6時間ぐらい外にいるので、屋内競技よりも蚊に刺される危険があるが、マラリアを理由に中南米やアフリカ、東南アジアや南アジアの大きな試合に出なかった選手は記憶にない。ジカ熱は蚊を媒介するウイルス感染症で、発熱や発疹などの症状が出るが、8割は発症しないという。ただ、女性、特に妊婦には新生児の小頭症の原因になるとも言われ、ワクチンはなく、怖くないとはもちろん言えない。ただ女子ゴルフから「辞退」の話は伝わってこない。

米国五輪委が不安な選手は辞退を検討していいとするなど各国の対応はまちまちだが、報道によるとIOCは開催に変更はないとし、リオ五輪組織委はブラジルでの発生件数が減少し、冬の7~9月はゼロになる予測を出した。個人の考え方なので判断に口出しできないが、賞金や日程、病気が「理由」となっていくのが男子ゴルフの特徴にみえるのは、五輪が「なんとしても出たい」という特別な大会と感じられないからなのだろう。

個人戦のみになったのが、まず面白味をなくした要因。個人戦ならメジャーのほうが人数も多く、レベルも高くて見応えがある。五輪復帰に当たってIOCの制約や要望が多かったと聞くが、団体戦を実施する時間など物理的な余裕があったら、選手の気の持ちようが違ったかもしれない。東京五輪組織委員会の要望がIOCにどれだけ届くかわからないが、4年後は団体戦を実施してほしい。

「出場したい選手」で代表枠争いを

世界ランクから出場上限(4人)などを単に入れ込んでつくった五輪ランクで個人に資格を与えるのも修正が必要だ。既存のものを使うというのは突貫工事で決めた感をぬぐえない。世界ランクのポイントは米、欧州ツアーは高く、日本ツアーなどは低い。大会ごとで違うので計算式は省くが、ポイント加算の「土俵が違う」のに、五輪出場という大事な権利を決めている。世界ランクとしては公平とされるのだが、五輪ランクとしては不公平。五輪ランクでは個人ではなく、各国の出場枠を決め、代表自体は各国独自に決めるほうがより公平だろう。他競技は「同じ土俵」で五輪への道筋が決まり、出場枠を与える競技も多い。日本国内で「出場したい選手」で代表枠を争う大会をやったほうが、たぶん興味もひきやすいし、辞退などという問題も起こらない。

五輪が迫る中で、資格のある選手の「出場するしない」という話題が出るのは、他競技の選手たちの目にどう映るだろうか。「五輪は賞金が出ない」という理由をしまいこんでいるなら、なぜ賞金が出るかを考えるべき。「ゴルフがうまい」も「スポンサー」も1番ではない。「ゴルフを見てくれる」「ゴルフをする」多くの人たちがいるから。五輪だと初めてテレビで見る人もいる。そういう人を増やすための五輪、ということをトッププロとしての「決断」の要素に加えてほしい。

2020年東京大会までの実施は決まっているが、その先に続くかは2大会で「見ている人がおもしろかったかどうか」が大きな基準だという。トッププロの多くが出ない大会に魅力を感じるだろうか。プロゴルファーにとって五輪が今まで目標ではなかったので戸惑うのは認めるが、その時代の牽引者が、五輪がこれからの子どもたちに目標となる可能性をつぶすことはあってはならない。

赤坂 厚 スポーツライター

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あかさか あつし / Atsushi Akasaka

1982年日刊スポーツ新聞社に入社し、同年からゴルフを担当。AON全盛期、岡本綾子のアメリカ女子ツアーなどを取材。カルガリー冬季五輪、プロ野球巨人、バルセロナ五輪、大相撲などを担当後、社会部でオウム事件などを取材。文化社会部、スポーツ部、東北支社でデスク、2012年に同新聞社を退社。著書に『ゴルフが消える日 至高のスポーツは「贅沢」「接待」から脱却できるか』(中央公論新社)。

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