「自分だけ得したい人たち」から身を守る技術 不機嫌な彼らに振り回されてはいけない

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この間も、上司が書類作成の仕事を頼んだところ、「私より慣れた人のほうが、失敗しないと思います」と言われ、さすがに上司もムッとしたとか。仕事のえり好みが激しいので、周囲からも疎んじられてきているようです。

借金も額が大きくなれば、本来は立場が弱いはずの「借りているほう」が、より強大な力を持つようになります。「返せないものは、返せない」と居直られたら、大金を貸しているほうは困るからです。

居直ってしまえば、弱者が強者に変わる。これはまさにそうした例です。

精神医学には、「疾病利得」という用語があります。これは、「病気になると得られる利益」のことです。病気になると辛いものですが、一方では、家族や医療者など周りが心配していろいろやってくれるという利益があります。中には、そうした利益のために、病気の状態でいることを望む人がいます。Eさんのようなタイプです。

彼らが求めるのは、一種の「疾病利得」です。職場では欠点と見なされがちな新人や部下であることを武器にして、自分の得になるようにもっていこうとします。誰かのヘルプを期待して、自分は努力をせず楽をしたいと考えるのです。

弱者である自分には、「わかりません」「できません」が許されると思っていて、注意しても「でも」「だって」と言い訳し、素直に謝ることはまずありません。

注意をすると、「私はこんなに一生懸命やっているのに、あの人はわかってくれない」と嘆き、それを周りにも吹聴するので、下手をするとまともに注意をしたほうが悪者にされてしまいます。

Eさんのようなタイプに対処するには、相手の自尊心をある程度満足させてあげることが大切です。「つらいのに、頑張っているよね」「経験がないわりに、よくやっているよ」と、とりあえずは褒めておきましょう。

同時に、未熟な部分に関しては、会社や組織のルールなどを持ち出して、秩序にはきちんと従ってもらわねばならないことを伝えるしかありません。「同僚や上司の言うことはスルーできる」と考えがちなタイプなので、「これができないなら、組織にはいられない」ということをきちんと理解してもらいましょう。

のちのトラブルを見越して、毅然と自分を守る

『職場にいる不機嫌な人たち』西多昌規(KADOKAWA 191ページ 2016/4/15発売) 書影をクリックするとアマゾンのサイトへジャンプします

ここまでに5つのタイプの「自分だけが得したい」人たちについて説明してきましたが、彼らと仕事をする際に、さらに気をつけたいのが、彼らがのちに引き起こすトラブルに巻き込まれないようにすることです。

自分の利益だけを追求し、後先を考えない彼らは、実際のところ、職場のトラブルメーカーでもあります。もし彼らに失敗を押しつけられそうになったときは、自分を守るべく、毅然とした対応も必要になってきます。また、そうした事態をできるだけ招かないように、普段から上司や同僚への報告をこまめに行い、現状への周知を促すクセをつけておくとよいでしょう。

自分のことしか考えない相手に振り回されてばかりいては、あなたが成果を残すことが難しくなります。こうした相手への対抗手段を知っておくことは、ビジネスマンとして重要なスキルなのです。

西多 昌規 早稲田大学教授 早稲田大学睡眠研究所所長 精神科医

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にしだ まさき / Masaki Nishida

東京医科歯科大学医学部卒業。ハーバード大学客員研究員、東京医科歯科大学大学院助教、自治医科大学講師、スタンフォード大学客員講師などを経て、現職。日本精神神経学会精神科専門医、日本睡眠学会専門医、日本老年精神医学会専門医など。専門は睡眠医学、身体運動とメンタルヘルス、アスリートのメンタルケアなど。著書に、『休む技術』『休む技術2』(大和書房)、『悪夢障害』(幻冬舎新書)、『自分の「異常性」に気づかない人たち』(草思社文庫)などがある。

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