あえて言う「消費増税再延期は正しかった」 いま消費税が10%になったら日本はヤバイ

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おそらくこんなことが起きたのであろう。仮に消費者が、今後の人生における生涯賃金が1億円だと考えているとする。消費税5%の世界においては、1億円のうち実際に使えるのは1億円÷1.05=9520万円ということになる。

それが税率8%になった瞬間に、可処分所得は1億円÷1.08=9259万円となる。つまり生涯で使えるお金が、一気に261万円減ることになる。約2.7%減だ。「その分を節約しなければ…」という意識が働いたのであろう。

そうだとすると、2017年から税率を10%に上げると、可処分所得はまたまた減って9090万円となってしまう。「さらに消費を1.8%切り詰めなければならない」という反応を招いてしまうのではないか。

なぜ日本だけ消費税を上げると景気が冷え込むのか?

待て待て、それが正しいとしたら、増税なんて永遠にできないではないか、という声が聞こえてきそうだ。まさにその通り。欧州ではVAT(付加価値税)の増税が普通に行われ、景気へはそれほど影響を与えていない。なぜ日本でだけ、これだけ消費を冷やしてしまうのか。そこが問題である。

日本の消費者は、将来の収入には上方硬直性があって、自分は限られた金額の中で生活していかなければならない、と思い込んでいる。それは錯覚かも知れないのだが、そういう誤解をするのも無理からぬところがある。①まず20年くらいにわたって物価は上昇していない。②ところが給料も増えておらず、今後も増える見通しが乏しい。③社会保険料の負担増などにより、可処分所得は確実に減っていく。④さらに「意図せざる長生きリスク」などにも直面せざるを得ない。

こんな風にデフレマインドが定着している中においては、増税はイコール消費縮小に直結してしまう。かくして2度目の増税を恐れるかのように、消費マインドは委縮してしまった。1997年の3%→5%の時と併せて、国民の中に消費増税に対する抜きがたい「トラウマ」が出来てしまった。

2019年秋に消費税の再増税に挑戦するのであれば、何よりもこのトラウマを乗り越えなければならない。そのために必要なのは、とにかく賃金を上げることであろう。

幸いなことに、今は失業率が3.2%、有効求人倍率は1.34倍にまで上昇している。バブル期に匹敵する水準だ。人口減少社会の日本においては、労働力は希少資源である。若い人を中心に賃金の上昇が続けば、デフレからの脱出が可能になり、その上で再増税や財政再建への道が拓けてくる。

だったら物価安定目標2%とは別に、賃金目標を掲げてはどうだろう。その場合、どの指標を使うかがちょっと悩ましいのだが、持久戦になりつつあるデフレとの戦いにおいては、そういう武器を使ってみるのもアリではないかと思うのである。

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