外国人投資家は日本株を見捨てていない 日経平均は「まさかの2万5000円超え」もある

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さて、構造改革はどうだろうか。まず、いつも議論となる規制緩和だが、この期に及んで鉄道、電話、電力の自由化のようなレベルでマクロ経済にインパクトを持つ規制が残っているだろうか。医療のように情報の非対称性など理由があって規制している分野に何らかのイノベーションを持ち込める場合にのみ大きな改革があり得るが、今のところうまいやり方が見いだされているとは言いにくい。移民による人口増はアベノミクスに含まれていない。だからこそ、日本企業が「稼ぐ力」を身に付けるという、新成長戦略の「1丁目1番地」となった戦略に大きな期待がかかるのだ。

機関投資家が会社と対話する際のあるべき姿を示した「スチュワードシップ・コード」、経産省による「企業と投資家の望ましい関係構築」プロジェクトの最終報告書として、その中身を示した「伊藤レポート」、会社が株主と関わる時の「コーポレートガバナンス・コード」が安倍政権の下で一気に整備されたことは、長年、日本のガバナンスに問題ありと考えていた投資家にとって、大変なサプライズだった。

投資家のみではなく、政治家、官僚、経営者、学者がそろって「欧米に比べて低い日本企業のROE改善を政策課題とする」ことに同意したということだからだ。

企業の「稼ぐ力」改革は種が蒔かれたばかり

だが、コーポレートガバナンス・コードの策定後、株主総会の集中期を迎えるのはこの6月が実質的には初めてだ。日本の主要企業が一気に株主重視の経営を行うと期待するのは気が早い。会計上の利益水準などに反映されるには時間がかかるし、多くの企業の行動が変わりマクロ経済へのインパクトが目に見えるためにも時間が必要だ。今、株式市場が最も期待する企業の「稼ぐ力」改革(「リターン革命」と私は呼びたい)は、やっと種が蒔かれたところなのだ。

アベノミクスの評価をまとめると、景気対策としての第一の矢、第二の矢は取りあえず必要な程度に展開されており(消費増税先送りなど財政政策が追加されるなどはあり得るが)、これ以上の政策は経済変動を完全にコントロールしようとする不可能への挑戦につながろう。そして、第三の矢は始まったばかりで、結果を出すには年単位の時間が必要だろう。

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