「給付型」奨学金が日本の貧困層には不可欠だ 成績だけで決めるべきでない本質的理由

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――財源は限られていますが、給付にするとしたらどういった基準でラインを引くべきでしょうか。

制度設計については、悩ましい面もあります。基本的には学びたい気はあるけど、親の所得によってあきらめざるをえない人に対して、給付型奨学金を希望にしてほしい、という考え方を取りたい。

成績を基準にすることも考えられますが、それではすくい取れない側面が出てきてしまうと思います。貧困層にいる時点で、さまざまなビハインドがあります。人生で早い段階でビハインドを負っていると、それが雪だるま式に増えていくもの。貧困だけど成績的に優秀ということは、統計的に少なくならざるをえない。

だからといって、「誰でもOK」とすると問題が生じることは否定できない。そうすると、答えはバランスをとって中間くらいに設定することになる。ある程度の成績は見つつ、貧困層をすくい取っていくことが基本になるでしょう。

使途自由の給付型は弊害も大きい

――事前に渡し切る形の給付にすると、モラルハザードが起きる可能性も指摘されています。

使途自由の形で奨学金を渡すと、問題が起きる可能性があることは理解しています。現在の貸与型奨学金でも、現金をその子の口座に支給すると、学生が遊びに使ってしまうということもある。また、低所得者層であればあるほど、家庭崩壊している可能性も高まります。振り込まれた奨学金を、親にパチンコで使われてしまうというリスクもあるんですよね。使途を学費に限定して、日本学生支援機構から大学に直接振り込むという選択肢もある。

――「トンネリング」に陥らない程度の所得層は、給付型奨学金はいらない?

日本がどういう国になりたいか、という視点から逆算していくと、当然、教育そのものにおカネがかからないほうがいいに決まっている。万民に対して普遍的に、教育におカネがかからないという形になることがよいとは思っていますよ。ただ、現時点では財源にも限界がある。ある程度の所得者層に対して、給付型奨学金にする優先順位はとても低いでしょう。

後編は、6月3日(金)に掲載予定。

関田 真也 東洋経済オンライン編集部

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せきた しんや / Shinya Sekita

慶應義塾大学法学部法律学科卒、一橋大学法科大学院修了。2015年より東洋経済オンライン編集部。2018年弁護士登録(東京弁護士会)

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