「硬直的な政策がもんじゅをダメにした」 鈴木達治郎・長崎大学教授に聞く

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「もんじゅへの勧告は核燃料サイクル全体を見直す好機だ」と話す鈴木教授

――東京電力・福島原子力発電所事故の後は、安全確保がそれまでにも増して強く求められるようになりました。

今回は規制委員会としても初めての勧告であり、大変厳しい内容だ。勧告文では、「当委員会は、機構(JAEA)のもんじゅの運転、なかんずく出力運転の主体としての適格性に関し、原子力利用における安全の確保の観点から重大な懸念を生ずるに至った」「機構がこれにふさわしい安全確保能力を持つとは考えられない」など、きわめて厳しい言葉が並んでおり、事実上原子力施設を運転する者として失格だという宣言に近い内容だ。

規制委員会としてはできる範囲で最大限厳しい宣言を出したと思う。ただし、新たな運営主体を見つけるのは難しいだろう。

もんじゅに関しては1995年のナトリウム漏えい事故以来、運営主体としての旧動燃やJAEAの「安全文化」が問われてきた。その際、現場からは「研究開発施設なのに商業用発電所と同じような厳しい規制をかけられているのはおかしい」という声がしばしば聞こえてきた。このことには正しい面もあるが、そうであるならば研究開発施設に特化したほうがよかったのではないか。

そうならずに発電用原子炉としての役割を担い続ける中で、発電プラントの経験もない研究者がプラントの部品の点検を命じられればミスも起こる。高速増殖炉の実用化時期が遠のいていく中で、当初から運営に参画してきた電力会社もコミットメントを減らし、経験のある人材を引き揚げていった。その結果として、今回のような安全管理が問われる事態になったのではないか。

勧告をきっかけに抜本的見直しを

――鈴木さんは、勧告をきっかけに抜本的な見直しをとおっしゃっています。

文部科学省が設置した「『もんじゅ』の在り方に関する検討会」では、JAEAに代わる運営主体探しに議論がとどまっているが、こういう時こそもんじゅのあり方にさかのぼって見直すべきだ。それのみならず、高速増殖炉サイクルの研究開発全体を見直すうえでちょうどよい機会ではないか。そもそも、高速増殖炉の研究開発を続ける意義はどこにあるのか、数ある技術の中で優先順位はどうかなどについて、社会的な視点も入れたうえで抜本的に検証し直す必要がある。

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