「硬直的な政策がもんじゅをダメにした」 鈴木達治郎・長崎大学教授に聞く

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――その場合、高速増殖炉の見直しだけにとどまりますか。

高速増殖炉そのものの見直しに着手することになると、核燃料サイクルや使用済み燃料の再処理そのものの見直しにつながるのは避けられない。なぜならば、高速増殖炉を遂行するためには使用済み燃料の再処理が不可欠である一方、もしも中止した場合には、再処理が絶対に必要だとは言えなくなるからだ。

現在の原子炉(軽水炉)を用いたプルサーマル発電だけでは使用済みMOX(ウラン・プルトニウム混合酸化物)燃料の再処理、つまり無限のリサイクルはできない。これを実現するには、TRU(超ウラン元素)廃棄物などやっかいな放射性廃棄物を高燃焼度で燃やすことができる高速炉の実用化が不可欠だが、実用化までやり遂げることができるかはわからない。そうした不確実性がある中で、これまでのように高速増殖炉実用化を前提に核燃料サイクルを続けることには無理がある。

結局のところ、使用済み燃料は再処理せず、直接処分する選択肢も考えざるをえないだろう。私が原子力委員会委員長代理として関与した「原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会」では、直接処分や直接処分と再処理の併用などいくつかの選択肢を提示したが、残念ながら顧みられることはなかった。

研究開発への特化も一案

――もんじゅは今後どうなると思われますか。

安全規制上、どうしてもリスクが減らないのであれば、燃料を取り出して廃炉にすることが考えられる。その前に、発電用プラントとしての役割をあきらめる選択肢がありうる。その場合、照射施設として活用することも一案だ。発電をしないので蒸気発生器は必要なくなる。ただし、研究開発に特化した場合は、すでにある研究炉「常陽」で十分だという意見も出てくるかもしれない。厳しい選択ではあるが、物事を柔軟に考えることにより、高速増殖炉の研究開発を続けることは可能だと思う。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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