「虫歯を治療しない」先に待つ怖すぎる事態 甘く見て放置すると文字どおり痛い目に

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脳や心臓など最も重要な場所に原因菌が到達してしまうと、最悪の場合は死に至ることもあります。体調が極端に悪かったり、糖尿病などのその他の病気を抱えていたりするのは要注意です。普通であれば免疫力で抑えられているものが、免疫力の低下で抑えきれなくなり、脳や心臓に到達してしまうのです。

鎮痛剤が効かず、眠れないほどの激痛

ここまでのケースは極端な例ですが、死に至らないまでも入院して手術しなければならないケースや耐え難いほどの激痛に襲われることもあります。そうでないまでも虫歯を放置すると歯が崩壊したり、顎の骨まで原因菌が広がったりすると薬も効かず、夜眠れないほどの激痛に襲われたりします。顎の骨に原因菌が広がり炎症がひどくなると入院して顎の骨を切除する手術をしなければならないこともあります。

虫歯の菌が歯の根っこ先まで進行し、根の先で繁殖するときに出る顎の骨を圧迫するような圧力で激痛を引き起こすときがあります。この痛みは、ひどい時は鎮痛剤も効きにくく、一説では人が耐えられる痛みの中で2番目に痛いと言われています。女性の患者様に出産より痛かったと言われたことがあります。ちなみに、一番は狭心症の痛みのようです。(もちろん人によって痛みの閾値は違いますが)

ほかにも、上顎の奥歯を放置したことによって副鼻腔炎(蓄膿症)になりひどい頭痛に悩まされることがあります。上顎の根っこの先は副鼻腔に近く、根の先まで進行した細菌が副鼻腔にまで流れ込んで副鼻腔炎になることがあります。この時に副鼻腔の内圧が高まり、周りの神経を圧迫して頭痛を引き起こします。

このように虫歯を甘く見て放置してしまうと、かなりおおごとになってしまうこともあります。そうでなくても、本来1〜2回で治療が終わるところが、放置してしまったために数カ月かかってしまうこともあります。

平気だと思っていて、痛みがなくても、治療せずに虫歯菌がいなくなることはありえません。気がつかないうちに虫歯は体の中に入り込んでいるのです。脳の血管に入り込んだ場合、血栓を作って血液の循環を悪くして頭痛を引き起こしたり、最悪の場合、脳梗塞など命に関わる病気に発展したりすることもあるのです。

歯科の基本は、「痛くなる前に」です。定期的に検診を行っていれば治療中の痛みもなく、歯も健康でいられます。

小林 保行 歯科医師/キーデンタルクリニック院長

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こばやし やすゆき / Yasuyuki Kobayashi

2004年東京歯科大学歯学部卒業、表参道の総合歯科医院に勤務。2006年市谷の歯科医院にて副院長として勤務。2008年に赤坂見附駅から徒歩1分の場所にキーデンタルクリニックを開院しました。開院以来、「確かな技術で納得の治療を」モットーに、あごや歯の場所を細かく分析をし、歯だけでなく口回りを総合的に診断。現在はムシバラボというサイトを立ち上げ、歯や口周りの情報を発信。主な資格はDHA岩田セミナー認定医、総合治療セミナー「一の会」認定医、クリアアライナー矯正認定医、日本顎咬合学会所属、日本インプラント学会所属、消防庁認定、救命技能講師修了。

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