「ほのぼの路線」で活性化図るJR四国の奥深さ 新幹線のない地域で「新幹線のルーツ」を発見

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四国鉄道文化館には本物の0系先頭車とDF50形ディーゼル機関車が展示されている

この0系もどきの「鉄道ホビートレイン」は、単に話題作りだけのために設計された列車ではない。実はこの四国の地こそ、東海道新幹線誕生と深いつながりがある。それは新幹線構想を強力に推し進めた第4代国鉄総裁・十河信二が愛媛県西条市の出身で、同市市長などを勤めており、西条市名誉市民第一号の栄誉を受けているからだ。

筆者の今回の四国の旅の目的は「新幹線つながり」と先人の偉業を検証することにあった。十河総裁は当時の国鉄技師長、島秀雄と共に新幹線建設に携わり、近年は「新幹線を作った男」「新幹線の父」として高く評価されている。

その十河信二記念館が伊予西条駅前に建ち、十河総裁の遺品、足跡などを紹介しており、隣接する「四国鉄道文化館」には0系新幹線の先頭車がDF50形機関車と共に大切に保存されている。この地を訪れると、四国と0系新幹線のつながりが良く理解できるであろう。

アンパンマンで家族連れ急増

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蒸気機関車の前面をイメージしたという8600系特急電車

四国の最近の鉄道の話題は2014年に登場した新型8600系特急電車であろう。JR四国で初となる空気バネ式車体傾斜機構を採用し、特徴ある前面デザインは「レトロフューチャー(前世紀の近未来デザイン)」がコンセプトで、蒸気機関車の前面部をイメージしている。

これはJR四国職員のアイデアだという。この新型特急電車は現在、岡山~松山間の特急「しおかぜ」と、高松~松山間の「いしづち」で運用されている。

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家族連れに人気のアンパンマン列車

特急列車のもうひとつの話題は、人気の「アンパンマン列車」に、春のダイヤ改正からリニューアルされた8000系電車が起用されたことだ。

これは空と虹をイメージした楽しいデザインの車両で、車内にもキャラクターが配置され、この列車の「アンパンマンシート」を目当てに家族連れの指定席ユーザーが急増しているという。岡山・高松~松山間において定期運行されているので、時刻表で確認して利用してほしい。

新幹線は走っていないものの、JR四国にはわれわれ「オジサン鉄」をくすぐるような懐かしい日本の鉄道の姿と、子供たちにも支持される鉄道の将来性を感じるのである。そして、与えられた環境の中で精いっぱいの努力を惜しまないJR四国の未来に通ずる鉄道の姿を垣間見た思いであった。

(すべての写真は筆者が撮影)

南 正時 鉄道写真家

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みなみ・まさとき / Masatoki Minami

1946年福井県生まれ。アニメーターの大塚康生氏の影響を受けて、蒸気機関車の撮影に魅了され、鉄道を撮り続ける。71年に独立。新聞や鉄道・旅行雑誌にて撮影・執筆を行う。

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