イスラエル胎盤細胞ベンチャー上陸の舞台裏

再生医療の法改正で海外企業が日本を目指す

プルリステムのアバーマンCEOはエンジニア出身。ロボット技術やソフトウエアの背景知識を製造工程の改善に生かしている(記者撮影)

プルリステムには、発売に至った製品はまだない。しかし、現在2製品の開発を進めている。1つは、炎症を抑えて筋肉の修復を促す、創傷の治癒のための製品。糖尿病などによって脚の血液の循環が悪くなり、脚の切断につながる重症虚血肢という病気や、手術で筋肉を切開した場合などの筋肉損傷が主な適応症だ。もう1つは、傷ついた骨髄を回復させる製品。たとえば、がん患者が放射線治療や抗がん剤による化学療法を受け、骨髄にダメージを受けて血を作る機能が低下した場合などに使う。

欧米より日本で先行発売も

いずれも欧米などでは臨床試験にすでに着手している。日本でも、まず1つ目の製品で、重症虚血肢を対象とした臨床試験を今2016年秋にも始める。アバーマンCEOは、「日本は法改正があったため、臨床試験開始では先行していた欧米より先に発売に至る可能性が高い。2018年にも日本での承認(新法による早期承認)取得を目指している」と言う。

目下、臨床試験の開始準備と合わせて、販売パートナーとなる日本企業を選定中だ。プルリステムが照準とする治療領域での販売能力を持ち、再生医療に参入する意志と投資意欲を持っていることが条件だ。

「およそ1年半前、日本のトップ20製薬企業と接触を開始した当初は、『イスラエルから製品を輸入することに承認が下りるのか』などと、どこも懐疑的だった。さらに、日本企業は患者自身の細胞で作るiPS細胞にしか興味がなかった」とアバーマンCEOは振り返る。

流れが変わったのは昨年12月。日本での臨床試験の実施計画について当局(医薬品医療機器総合機構)と合意したことで、臨床試験の現実味が増し、日本企業も関心を示すようになった。昨年9月には、関西のJCRファーマが、患者自身ではない他人の細胞を使った再生医療製品の承認を日本で初めて取得し、同製品には1治療当たり約1400万円という価格が付いた。これをきっかけに、日本企業が他人の細胞を使う製品に目を向け始めたことも追い風だ。

イスラエルは知る人ぞ知るスタートアップ企業支援国家で、毎年約1000のベンチャーが誕生。そんな起業家精神あふれる国から来たアバーマンCEOは、「イスラエル企業は革新的で、物事を早く成し遂げようとする。一方、日本企業は安定していて、物事の精度を究めようとする。日本企業とイスラエル企業は非常によいマッチング。協力すれば大きな相乗効果が得られそうだ」と日本での展開に期待を込める。

2014年来、「世界一の再生医療の法制度が整備された」と言われながらも、海外勢が実際に日本に上陸を始めたのはつい最近のこと。これまでは、承認された再生医療製品数で欧米や韓国の後塵を拝していた。今後プルリステムのように日本で開発・製品化に乗り出す企業が増えれば、名実ともに再生医療の中心地となる可能性が出てくる。

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