テルモ、新製品は医療機器の歴史を変えるか 新宅社長が狙う"輸出入の逆転"とは?

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医療機器大手のテルモは、欧米企業とどう戦うのか (撮影:梅谷秀司)
欧米企業が台頭する医療機器業界において、血管に細い管を通すカテーテル治療分野で世界4位と存在感を発揮するテルモ。心臓の再生医療という新領域に参入し、米国の事業拡大にも乗り出す。今後の戦略を新宅祐太郎社長に聞いた。

 

――今年9月、心臓治療用の細胞シート「ハートシート」が製造販売承認を取得した。

心臓用では世界初の再生医療製品だ。再生医療は日本が世界のトップランナーに近い。日本とテルモの象徴として継続してやっていきたい。

現状は患者自身の脚の筋肉の細胞を使い、個別のブースで4週間培養する。生産性を向上させ、iPS細胞(人工多能性幹細胞)といった、患者以外の人の細胞も使えるようにするなど、一つひとつ改善していく。新しい技術なので、ビジネスインパクトは長い目で見てほしい。

商品化のメドがついたのは2007~08年ごろ

――開発で苦労した点は?

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重症心不全の患者の心臓に張り付けると、心機能が改善する「ハートシート」

当初は、患者の細胞を心臓に注射器で直接注入するという方法をとっていた。だが、この方法は心筋にダメージを与え、不整脈などの副作用が出て、行き詰まってしまった。

そこへ、共同開発していた大阪大学の澤芳樹教授から、細胞をシート化する技術を紹介された。さっそく試してみたら、顕著な違いが出た。こうして、「もしかしたらいけるかもしれない」というメドがついたのが、2007~2008年ごろだった。

その後、国も再生医療の早期実用化のために、これまであった「医薬品」や「医療機器」とは別に、「再生医療等製品」というカテゴリーで承認審査ができる枠組みを作ってくれた。その法改正がなければ、製品化は難しかっただろう。

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