ドコモは営業益8000億円の呪縛を解けるか? 中期計画を1年前倒しで超過達成の見通し

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2017年3月期も増収増益を目指す。営業収益は929億円増収の4兆6200億円、営業利益は1270億円増益の9100億円を見込む。今期から償却方法を定率法から定額法に変更する影響は500億円の増益要因となるため、この影響を除くと770億円増益の8600億円。計画通りに達成できれば「2018年3月期に営業利益8200億円以上」という中期目標を1年前倒しで超過達成することになる。

通信事業は総契約数が434万件増の7530万件、純増数は前期比微増の440万件と前期並みの伸びを見込む。総務省が公表したスマホ販売ガイドライン(過度な端末の割引などを規制する)の影響を織り込んで、総販売台数は66万台減の2540万台を見込む一方、端末購入代金分を(機種によって異なる)毎月の料金から割り引く「月々サポート」も減らす。

そのほか、6月から長期ユーザー向けの料金優遇策を拡充することが700億円の減収要因となるが、ユーザーをデータ通信量がより多いプランへ誘導することで相殺する方針だ。

加藤社長は「通信領域の営業利益は(定額通話プランを導入する前の)2014年3月期の水準を目指したい」と述べた。2014年3月期の営業利益は8192億円で、ほぼすべてが通信領域だった。

長年の停滞から抜け出せるのか?

一方、スマートライフ領域は営業利益1200億円と413億円の増益を目指す。特殊要因を除いた前期のセグメント利益は900億円なので、実質的には300億円の増益だ。これら事業の成長に加えて、今期は800億円のコスト削減を見込んでいる。

会見の途中で明るい表情を見せる加藤社長。内心、ほっとしていることだろう(撮影:今井康一)

ちなみに、ドコモは2015年3月期に音声定額プランを導入したが、最も安いプランへユーザーの加入が集中したため、約1000億円の減収・減益要因となったことがある。今回、長期ユーザーへの料金優遇を進める一方で、他社からの乗り換え客に対する値引きの抑制や、データ通信量がより多いプランへの移行に注力するのは、定額プラン導入時の轍を踏まないため、という意味合いもある。

会見では今後の成長戦略に関して「一段の成長にはM&Aも必要なのでは?」との質問が出た。これに対し、加藤社長は「いいものがあれば」と目を輝かせる一方で、「過去に痛い目にあっていますから。現状検討している案件はない」と述べるにとどまった。

「5月11日には新商品発表会を予定している。少し期待していただけたら」と自ら切り出すなど、上機嫌の加藤社長だったが、「好決算で人心が緩むことが怖い。『油断なく、謙虚に』と社内に訴え続けている」と引き締まった表情も見せた。長年、営業利益が8000億円前後で停滞し、アナリストから「もはや成長しない会社」と指摘されてきたドコモ。2017年3月期は、復活・再成長に向けた道筋を示す転換点の年と言えそうだ。

山田 雄一郎 東洋経済 記者

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やまだ ゆういちろう / Yuichiro Yamada

1994年慶応大学大学院商学研究科(計量経済学分野)修了、同年入社。1996年から記者。自動車部品・トラック、証券、消費者金融・リース、オフィス家具・建材、地銀、電子制御・電線、パチンコ・パチスロ、重電・総合電機、陸運・海運、石油元売り、化学繊維、通信、SI、造船・重工を担当。『月刊金融ビジネス』『会社四季報』『週刊東洋経済』の各編集部を経験。業界担当とは別にインサイダー事件、日本将棋連盟の不祥事、引越社の不当労働行為、医学部受験不正、検察庁、ゴーンショックを取材・執筆。『週刊東洋経済』編集部では「郵政民営化」「徹底解明ライブドア」「徹底解剖村上ファンド」「シェールガス革命」「サプリメント」「鬱」「認知症」「MBO」「ローランド」「減損の謎、IFRSの不可思議」「日本郵政株上場」「東芝危機」「村上、再び。」「村上強制調査」「ニケシュ電撃辞任」「保険に騙されるな」「保険の罠」の特集を企画・執筆。『トリックスター 村上ファンド4444億円の闇』は同期である山田雄大記者との共著。

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