“トヨタ列車”が大増発 部品輸送を船舶から貨物列車へ カイゼン進めコスト効率も向上

事前の実証実験でも途方もない時間を費やしている。JR貨物の今橋一樹・ロジスティクス本部営業部自動車グループ部長代理は「通常のお客さんであれば、トライアル輸送は1~2回が基本だが、トヨタさんは244日と年間稼働日を通し、不具合を見つけてはカイゼンを行う毎日だった」と驚きを隠さない。


 欠点をカバーできれば、利点は大きい。発注から到着までのリードタイムは、従来ルートである名古屋港から仙台港を経由し、さらにトラック輸送する場合に比べて0・5日短い2日に短縮できたことで、「部品管理が行き届き、今まで以上に柔軟な注文が可能になった」(トヨタの田中物流企画部長)という。

JR貨物では、トヨタ列車の意義が大きかったのは第一便より第二便と口をそろえる。第一便は関東自動車の増産に合わせて増産分を獲得した格好だが、第二便は内航船輸送からのシフトだった。「環境面だけでなく、コストなど総合評価で鉄道輸送が認められた証左だ」(JR貨物の今橋部長代理)と自信を見せる。

宅配便分野に進出 営業赤字も解消

JR貨物によると、トヨタ列車は合計で年間20万トン分の自動車部品、おおよそ小型車20万台分を担っているという。今や関東自動車岩手工場の約6割を鉄道輸送が占める計算だ。専用コンテナの数は450個に上り、日本通運が保有する31フィートタイプの約半分はトヨタ向けとなった。JR貨物が次に狙うのは完成車輸送。トヨタへの提案を始めたところで、将来の野望は大きくなる一方だ。

JR貨物の成功体験はトヨタに限らない。04年3月に運行開始した佐川急便向けの高速列車「スーパーレールカーゴ」の成功も大きい。貨物列車の前後に電動貨車をつけた“電車型”貨物列車。動力を分散させることで電気機関車は通常の貨物列車に比べ、時速で110キロメートルから130キロメートルへ高速運行を可能にした。東京-大阪間は30分短い6時間10分で結ぶ。JR貨物が提案して佐川が承諾。佐川は東京-大阪間1往復でトラック56台分、1割を鉄道輸送に切り替えた。重厚長大が主流の鉄道貨物市場で、宅配便という新境地を開拓した意義は大きい。「時間に最も厳しい宅配便で成果を出せたことは自信になった」とJR貨物の今橋部長代理は目を輝かせる。佐川も「鉄道輸送はもっと利用していきたい」(西井茂輸送開発部課長)と話す。

JR貨物は昨年4月施行の改正省エネ法も追い風にして、年間輸送量3000万トンキロを超える荷主約800社を対象に、モーダルシフトの営業提案もかける狙い。昨年3月には韓国鉄道公社と提携し海外にも進出した。旧国鉄時代から利用している老朽車両の刷新やダイヤの限界など課題は山積するが、トヨタプロジェクトの成功は、JR貨物の鉄路を確実に延ばしている。
(週刊東洋経済編集部)

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