東芝、原発減損でも債務超過回避 資本「非常に低い」と社長 2.6%を覚悟した自己資本比率は5.5%に
[東京 26日 ロイター] - 東芝<6502.T>は26日、米子会社ウエスチングハウス(WH)を含む原子力事業で2015年度に2600億円の減損を実施すると発表した。3月に決まった医療機器事業のキヤノン<7751.T>への売却に伴う利益も併せて計上し、債務超過を回避する。
15年度末の自己資本比率は5.5%の見込みで、室町正志社長は記者会見で「非常に低水準。資本政策も含めて検討が必要」と述べ、資本増強が課題との認識を示した。
この日、15年度の連結業績予想を修正。従来7100億円と見込んでいた当期赤字額は4700億円に縮小する。医療機器事業の売却益3800億円(税引き後)を計上するため。
2月4日時点で1500億円と債務超過寸前まで落ち込むと見込んでいた自己資本は、3000億円とやや回復する見込み。室町社長は会見で「財務基盤が安定したとは思っていない」と述べた。
また、パソコン事業における富士通<6702.T>、およびソニー<6758.T>から独立したVAIOとの統合交渉について室町氏は「白紙撤回になっている」と明言した。
<原発減損、財務悪化が要因と説明>
東芝は06年10月、当時の為替レートで約4900億円でWHを買収。買収額とWHの純資産額との差額(約3500億円)を無形固定資産(のれん)に計上した。
11年3月に起きた東京電力<9501.T>福島第1原発事故を機に、世界的に原発事業の環境が厳しくなり、東芝が抱えるのれんに対して業界関係者からは減損への懸念が示されていた。ただ、昨年春の不正会問題の発覚後の昨年11月にも、東芝は同のれんのついて「減損の必要なし」と説明していた。
電力会社からの受注で成長できた日本国内とは異なり、海外ではメーカーが一定の建設資金を求められることもある。東芝の場合、財務悪化に伴う格付け低下など資金調達コストの上昇が見込まれることが、今回の減損に至った背景にある。
<医療事業の売却益計上、監査法人も容認>
原発の減損に踏み切れば債務超過転落の恐れもあったが、子会社だった東芝メディカルシステムズ(TMSC)をキヤノンに売却することを決め、15年度中の利益計上にめどをつけたことで危機を回避した。
同取引では、各国競争法の審査を経てキヤノンへの売却が完了するまではペーパー会社にTMSCの議決権を持たせる手法を採用。3月中に東芝に資金が払い込まれたが、キヤノンによるTMSC買収はまだ完了していない。
TMSCの売却益計上について東芝の平田政善上席常務は「監査法人から否定的な意見はない」と説明した。
*内容を追加します。
(浜田健太郎 編集:山川薫)
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