改正パート法で何が変わる? 理想と現実に落差 抜け穴探しも横行
「パートも更衣室を使えないと差別になりますか? 」
「パートにも介護休暇を認める必要があるのでしょうか? 」
こうした企業からの質問が日本経済団体連合会(経団連)に殺到している。4月1日施行の改正パートタイム労働法を受け、各企業の人事担当者が対応に追われているためだ。
今回の改正は「働きに応じた待遇に見直すことで、正社員とパートとの給与格差をなくす」(厚生労働省短時間・在宅労働課)ことが目玉。少子高齢化で労働力が減少していく中、パート労働者と正社員との差別的待遇を見直すことで、安定した労働力を確保すべきという時代の要請が強まっていることが背景にある。
法改正のポイントは二つだ。一つは、企業が労働条件を明示した文書を交付し、給与などの待遇についてパート労働者に説明する義務が生じたこと。これにより、企業は職務内容など根拠に従って待遇を決める必要が出てくる。もう一つは、正社員と同一労働のパートの場合、待遇を正社員と同等にそろえる必要があること。契約期間に定めがなく、仕事の中身や責任、人事異動の有無などが正社員と同様であれば、企業は賃金差別をしてはならない。
「一律で時給1000円などという説明は違法」。厚生労働省はそう話す。こうした法改正の趣旨について労働側は当然のことながら歓迎の姿勢だ。全国ユニオンの鴨桃代会長は「パートは企業の言い値で待遇が決まっていた。今後は企業と対話しやすくなる」と評価する。だが、現実にはそう簡単に事は運ばない。
請負業者に切り替え あえて“差別化”も
「待遇を決める基準の公平性や透明性が、どのように機能するのか。企業側としては悩ましい」
経団連労政第二本部の松井博志本部長はそう語る。労働条件の説明義務ができたとはいえ、中小企業の場合、従業員の評価や待遇が社長の一存で決められてきたケースが少なくない。ルール化されていない評価をすべて文書化し、個々人の仕事に応じた待遇を決定できるのか。同業他社との比較など“相場”で時給を決めてきた企業には荷が重そうだ。
いくら明示義務が課されても、パート自らの意識が変わらなければ、せっかくの新制度も浸透しないとの見方もある。中堅企業の人事担当者は「待遇の根拠について質問するパートなんて、クレーマーのたぐい。店長が個々の説明に追われることは想像しにくい」と高をくくる。パートのほとんどが「家から近い」「短時間で働きたい」など個人的な都合で職場を選んでいると考える企業も多い。パートと一口に言っても、働き方はさまざま。パート労働者の間でも、法改正に対する受け止め方には濃淡が出そうだ。