作業がはかどる「朝の30分」こそムダ話に使え

「仕事だけの組織では、仕事が行き詰まる」

通販で業績を伸ばして社長に就任し、最初に考えたことは「これでは、必ず行き詰まる」。人の潜在意識には、そう簡単に変わらない「思考回路」がある。もし当時の社員に「売り上げが伸びて嬉しいか」と聞けば、表面上は「嬉しい」と答えるに違いない。だが、心の中で「余計な仕事を増やされたくない」と思っていれば、必ず影響は仕事の細部に及ぶ。

「私がそのことを痛感したのは、『よなよなリアルエール』を出したときです。私は『新しい売り方にチャレンジしよう!』と考えプロジェクトチームをつくり、4~5人指名したんですが、みんな新たな仕事に興味がないんです。なかには『忙しい』『発売に賛成してない』などとさまざまな理由をつけ、まったく動かない人もいました。いつまでにこの仕事を、と決めてもやってこない。それどころか、やりたくないから『こんなことしても意味ないんじゃないの?』といった発言をして、むしろ進捗の邪魔をするんです」

ところが、現在のヤッホーブルーイングは真逆の雰囲気だ。いったい何が起きたのか。

ポイントは「相互理解」と「一体感」

井手 直行(いで・なおゆき)/ヤッホーブルーイング代表取締役社長。よなよなエール愛の伝道師。1967年生まれ。福岡県出身。国立久留米高専電気工学科卒業。大手電気機器メーカー、広告代理店などを経て、1997年ヤッホーブルーイング創業時に営業担当として入社。地ビールブームの衰退で赤字が続くなか、ネット通販業務を推進して2004年に業績をV字回復させる。現在まで11期連続増収増益。全国200社以上あるクラフトビールメーカーのなかでシェアトップ。2008年社長就任。ニックネームは「てんちょ」。

井手氏が始めたのは「チームビルディング」だった。彼は思い悩み、楽天市場で「チームビルディング研修」を受講した。これをそのまま実施したのだ。

最初は座学。チームは「互いの得意な分野を活かし、苦手な分野は人に任せる」ことが理想の姿だと言う。

仮に5人のチームで大学を受験するとしよう。1チーム目は、全教科80点とれる優秀な人材が集まっている。2チーム目は極端で「国語だけは100点とれるが、残りは50点以下の落第点ばかり」といった人材が5人揃っている。ただし、国社理数英の5教科、それぞれが得意な人材が集まったとする。結果、チーム力を最大に発揮することができれば、勝利するのは2チーム目。ようするに、チームを組めば、全員が心置きなく得意な分野を伸ばせるのだ。そして「得意なこと」は、たいてい「楽しいこと」でもある。

「次に、実際にチームをつくって、頭を使わなければできない共同作業にチャレンジします。たとえば、10人くらいのチーム全員が輪になって人差し指でフラフープを支えます。これを、全員が手に触れている状態で徐々におろしていき、地面に置きます。途中で誰かひとりでも指が離れたら最初からやり直し。最初は知らない人ばかりなので遠慮します。しかし息が合わないとできないから、そのうちみんなイライラしてきて、雰囲気が悪くなる。なかには『こんな研修、もういいよ』と携帯電話をいじり始めてしまったり……」

実は、全員が力を合わせれば、どのミッションもなんとか達成できるのだ。しかし、全員が力を合わせなければ前に進まない。

「研修を受けながら、私は『どこかで見た光景だ』思いました。そう、朝礼や製品開発など、私たちの会社はすべてこの調子だったんです」

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