英「エコノミスト」のアベノミクス評は激辛だ 円と日本経済の今後について厳しい評価
この書籍は、基本的に、過去一年の英『エコノミスト』誌に掲載された、米国、中国そして日本にそれぞれの通貨に関する記事を集めている。ところが、ひとつ注記が必要だ。実は、「円」そのものの特集は過去1年間の中に1つもなかったのだ。
円と日本に対する『エコノミスト』誌の基本的な評価は、次の一文によくあらわれている。「1980年代には、日本がアメリカ経済の脅威になるかと思われた。日本はアジア諸国に対して『円』圏に加わるよう派手にはたらきかけたこともあった」(第一部第2章より)。
要するに、日本や円は、すでに「過去形」。ポンドと同様に、歴史の点描として記事の中に登場することはあるものの、「円」そのものの特集記事は、過去一年間の英『エコノミスト』誌には一本もなかったのである。
そこで、版元である文藝春秋社はひと手間を掛けた。「日本と円の未来」に関し、同誌のシンクタンクであるエコノミスト・インテリジェンス・ユニットに調査・執筆を依頼し、第四部「円の未来 黄昏の安定通貨」を独自に構成したのだ。
日本経済と円の未来について書き下ろした第四部の中身は、衆議院補選前の争点のひとつにもなっている「アベノミクス」の評価について紙幅を割くものになっている。
英エコノミストの日本に対する評価は?
これが、実に厳しい内容だ。要点は次のようになる。
ただし、円のみが問題なのではない。英『エコノミスト』誌は、ドルの力も相対的に弱まり、中国の元も、国内の政治的な不安定をもたらす、国内市場の完全自由化とトレードオフでなければ、国際通貨としての地位を確立することはできないと指摘している。
つまり、今の世界経済体制では、ドルも元も円も、基軸通貨たりえないということだ。「最後の貸し手」がいない体制になっているこの状態にこそ最大の危機があるというのが英『エコノミスト』誌の見方なのである。
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