反日デモで揺らぐ損保業界の中国戦略 巨額の支払金額発生へ

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もっとも、特約を付けていても補償の対象とならないケースがある。騒擾の一巡後もストライキの発生を受けて、自主的もしくは政府当局の指導により店舗や工場が休業を余儀なくされている日系企業が多い。この場合は工場設備などが損害を受けたわけではないため、休業による利益の損失は対象にならない。

現在は契約更新のみ

損保業界では、保険金の支払額について「これから調査を開始するところなので何も言えない。ただ支払保険金が約5000億円に及ぶタイ水害のような経営へのインパクトはない。(リスク分散で)再保険に出す分を含めると、損保全体への影響は100億円に達しないのでは」(大手損保)という声が多い。

とはいいながら、中国でのSRCC特約について、大手各社は軒並み新規引き受けと補償額の増額を停止しており、契約更新のみ受け付けている状態だ。今回の事件後、問い合わせは急増したというが、新規、増額を再開するメドは立っていない。「巨大自然災害の後と同様にリスクを見極める必要がある。今後は再保険市場の動向も不安定要因」(大手損保)のためだ。SRCC特約の停止は、日本企業に中国進出を躊躇させる要因となり、ひいては損保会社の収益機会が減ることになりかねない。

中国保険監督管理委員会によると、2011年の中国損保市場の規模は4618億元(元受収入保険料)で、うち欧米系も含む外資のシェアは1%強にすぎない。日本の損保会社も保険料収入が最も多い東京海上日動で4億7387万元(60億円弱)と小規模だ。自動車交通事故責任強制保険(自賠責保険)が外資に開放されたこともあり、各社は中国でのリテール事業の強化を視野に入れている。が、根幹である日系企業向けビジネスが揺らげば、それもままならないだろう。

(週刊東洋経済2012年10月6日号 上写真は撮影:今井康一)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

 

石川 正樹 東洋経済 記者

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いしかわ まさき / Masaki Ishikawa

『会社四季報』元編集長。2023年より週刊東洋経済編集部。

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