「フリー40歳定年」がテレビをつまらなくした

経費削減がもたらした放送作家の変質とは?

「フリーランス40歳定年説」という至言を御存知だろうか。フリーランスを生業とする人物は、40歳になると仕事の数が減り、挙句に廃業に追い込まれるという警句である。フリーランスとはその名の通り企業に属さない職種を指し、ライター、デザイナー、プログラマー、エディターなどが該当する。当然、放送作家も含まれる。

10年前、1週間でテレビ4本、ラジオ4本を担当するなど一応は多忙だった筆者も、40歳前後から仕事は減少し、現在はテレビ1本を残すのみとなった。もちろん、それぞれに事情はあるし、減ったというより、あえて減らした側面もあるため、一概に理由は一括りにできないが、周囲にいる40代の多くの同業者が、ジンクス通りの展開を歩んでいるのは、奇妙なことである。

キャリア豊富な年長者は敬遠される

理由を突き詰めると、その背景には前述の予算削減もあるが、雇う側の変化もある。遅くとも20代後半にはその座に着任する多くのディレクターにとって、作家が年長となる事例は多い。先述したように、同じ番組を作る上でのパートナーといえるディレクターと放送作家の関係性を工事現場に喩えると、ディレクターが現場監督で、放送作家は設計士といったところだろうか。

キャリアの豊富な設計士だと、助かる面もあるが、延々と主導権を握られると、現場の監督としてはやりにくいことこの上ない。主導権を握られず、自らの理想を貫き番組を作りたいとディレクターが考えれば、自ずと手下のような存在を欲するようになるのは道理である。年長者は手下にはならないからだ。そこで、若い作家に比較的多くの仕事が割り振られる。新人の彼らはギャラも安い。予算削減の観点からいっても、抜擢理由として理に適っている。

結果、ベテランは淘汰され、新人の血が番組に導入される。「40歳定年」はそういう理由からくる。先述の「浮いた6人分のギャラ」の6人とは、その基準で含まれることも少なくない。「自然の摂理」と思えば、さして悪いことではないが、弊害が生じているのも事実である。

かつて、テレビ業界に多くの鬼才が跋扈したのは、テレビ局自体に、普通の人が忌避するような「ならず者」が集まる梁山泊の色彩を帯びていたからだ。「昔はね、テレビに入る奴の多くは体育会系の学生か、ジャズマン。確かにならず者。揉め事やトラブルは大袈裟でなく毎日のことだったけど、逆に言えばやくざが来ても平気だから、トラブルを起こすだけじゃなくて、解決する力もあったんだな」(前出の老テレビマン)

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