「世界的1兆円企業目指す」 メガネの“革命児”ジェイアイエヌ社長に聞く
--高成長は自己の全否定から始まったと。
今までを全否定して組織を改革、改善するとなれば、ものすごい苦労も待っている。企画から生産、流通、販売に至るバリューチェーンの各ポジションが全員、お客様を向いて仕事をしなくてはならない。全体最適であるべきなのが、いつの間にか個別最適、チーム最適になっていた。これではダメだ、徹底的に変えようと。そこで会社を辞めていく人もいたし、辞めてもらった人もいました。
--商品戦略では09年から「4つのプライス、レンズ追加料金ゼロ円」を打ち出し、超軽量「エアフレーム」や「JINS PC」などの革新的な新製品が大ヒットしました。
以前、われわれはファッション重視で若者を顧客の中心に据えていました。それを、「メガネをかけるすべての人によく見える、よく魅せるメガネを市場最低・最適価格にて新機能、新デザインを継続的に提供する」と事業価値を明確に変えた。それを形にしたのが「追加料金ゼロ円」であり、「エアフレーム」や「機能性アイウエア」でした。
追加料金ゼロ円とすれば、販売平均単価は下がり、原価は上がる。利益は薄くなる。それを防ぐには本数を1.5倍以上売らなければならなかった。そこで業態改革、エアフレーム、JINSという新たなブランド名を一挙に09年9月17日に打ち出し、5億円の広告宣伝費もかけて勝負に出た。私にとってはまさに「桶狭間」。「背水の“JIN”」でした。
エアフレームという軽量メガネの新しい概念を市場に植え付けて、それが大ヒットし、市場全体の流れも作った。さらに新デザイン、新機能を打ち出そうということでPCやスポーツ、ドライアイ用といった新機能のメガネを投入し、顧客の支持を得ている。
そしてコンセプトも「あたらしい、あたりまえを」を打ち出した。メガネは視力補正用だけではない。メガネを通じて今までになかったライフスタイルを生み出し、新しい当たり前を作っていきたい。
「イノベーションによって歴史を変える」それが合言葉
--イノベーションを生み出す源泉や仕掛けとは。
何も手品のようなことはありません。新機能、新デザインにしても、本気でそれを考えるかどうか、執着するかどうかだと思います。執着すれば、寝ても覚めてもアイデアは出てくる。仕事というのは、そういうふうにならなければダメなんじゃないかと気づきました。社長はもちろん、各役員、社員がそれぞれの役割の中で考える。
刺激を生むという意味では、産学での共同研究もあります。現在、慶応大学や東北大学などと共同研究をやっているが、メガネと直接関係ない方々と議論する中で新たなアイデアが出てくることもある。PC用のメガネにしても、もともと目は悪くない私自身が疲れ目で困っていて、慶大の網膜の先生に相談したところ、ブルーライト(青色光)の存在を知り、一緒に研究をしてきた成果でした。