三菱重工、豪華客船で払った高すぎる授業料 注文こなせず混乱、造船事業は縮小か

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縮小

だが「高付加価値船にとらわれすぎ、実力の見極めが十分できていなかった」(宮永社長)。実績作りを急ぐあまり、1番船を手掛けるリスクを精査せず、ひいては契約面でも甘さを残す。専業の造船会社であれば、経営が傾くほどの巨額損失を出した背景には、起死回生を狙った造船部門の焦りが窺える。

こうした状況は経営管理のほころびも露呈。造船所ごとの独立性の高さがあだとなり、着手から2年程度は工程遅延など正確な状況を経営陣が把握できずにいた。2013年度にやっと、幹部以下担当者の入れ替えやエンジニアリング部門の投入でテコ入れを図ったが、挽回に至らなかった。

創業の地、長崎造船所を縮小へ

選択と集中の戦略が暗礁に乗り上げた結果、三菱重工はとうとう創業の地にメスを入れる。2015年10月、長崎造船所を分社化し規模も縮小。これから欧州向け貨客船を受注し客船建造技術を温存する構えだが、大型客船撤退を決めた場合、今回の経験は“骨折り損”に終わりかねない。

造船以外の部門にとってもひとごとではない。海外での大型案件の獲得を積極化する中、過信や契約段階での詰めの甘さは命取りになる。

今後は「客船の反省をグループ全体のエンジニアリング能力強化に結び付ける」(宮永社長)ほか、新規案件などリスク管理体制を見直す方針だというが、高い授業料をどこまで生かせるか。1872億円に見合う成果を得るのは、そう簡単ではない。

「週刊東洋経済」2016年4月16日号<11日発売>「核心リポート02」を転載)

山本 直樹 東洋経済 記者

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やまもと なおき / Naoki Yamamoto

『オール投資』、『会社四季報』などを経て、現在は『週刊東洋経済』編集部。

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