日立が作った「超積極的」接客ロボットの実力

先行する「ペッパー」を超えられるのか?

日立はこれまで「人と共生するロボット」をテーマに開発を進めてきた。初代ロボット「エミュー」の発表は2005年。2007年には、人と同じ速さで自走し、雑音中でも人の声が聞き分けられる機能などを備えた「エミュー2」を発表した。

足についたローラーを使い、まるでラジコンのように進む。移動時も体勢は安定していた。背中についた羽のような部分は持ち運び用の取っ手。後ろ向きに倒れた場合、この部分を利用して起き上がる

それ以降もさまざまな機能を開発。2014年には人と対話するための音声認識・発話の機能が追加された。そのほか、死角から人が飛び出す危険を予測して回避する機能なども加わっている。そこからさらに進化したエミュー3が接客・案内サービスに特化したのは、少子高齢化によってサービス分野の人手不足が進展することを見込んだからだった。

今後は顧客企業との実証研究を通じ、サービスやシステムの具体的な内容を作り込んでいく。日立はエミュー3本体とIT基盤システムの双方をパッケージで提供し、収益確保を目指す方針だ。研究開発グループ機械イノベーションセンタの馬場淳史氏は「数社とすでに実証研究を進めている。2018年をメドにサービス提供を開始したい」と語った。

また、外国人観光客の増加によって接客が高度化する可能性を見据え、実験段階ではあるものの、英語のほかに中国語や韓国語への対応も進めているという。

課題は「会話によるコミュニケーション」

満を持して発表されたエミュー3だが、普及は進むのだろうか。比較されるのはやはり、ソフトバンクが2014年6月に発表したヒト型ロボット「ペッパー」だろう。

ペッパーは現在、商業施設や量販店、銀行など多くの場所で受付・案内を行っている。ソフトバンクは3月下旬、ペッパーが客引きから契約、商品を待つ客を楽しませるダンス、引き渡しまで行う「Pepperだらけのケータイショップ」を東京・表参道に出店。"客寄せパンダ"からの卒業をアピールした。

ソフトバンクのペッパーは法人向けの拡大に向けて、客寄せパンダからの卒業をアピールしている(撮影:尾形文繁)

ペッパーとエミューの最大の違いはコミュニケーション手段だ。胸のタブレット端末を用いて接客を行うペッパーに対して、タブレットを持たないエミューは会話がメインとなる。説明会のデモにおいても、言葉のやりとりのみで客の要望を把握し、商品をおすすめしていた。

ただし、ロボットにとって「会話」ほど難しいものはない。人によって異なる発音や微妙な言葉使いを理解する言語処理の技術。さらに、商業施設などの混雑した場面でも、相手の声を正確に聞き取る高度な音声認識技術が要求されるからだ。

日本の製造業を牽引してきた日立はロボット分野でも存在感を発揮できるか。質の高い接客サービスを実現し、先行する「ペッパー」の背中に追いつくには、ごまかしのきかないロボット技術を鍛え上げることが必要だ。

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