「軍事偏重で非効率な米国の復興支援計画」ジェフリー・サックス コロンビア大学地球研究所所長

現在、アフガニスタン、エチオピア、イラン、イラク、パキスタン、ソマリア、スーダンといった紛争地域の多くは、根底に共通の問題を抱えている。それらの国はいずれも貧しく、洪水や干ばつ、地震に見舞われ、食糧の供給力を上回る人口増加がみられる。また人口に占める若年層の比率が非常に高く、軍隊においても15歳から24歳の青年の比率が急激に増えている。

 これらの問題は、いずれも持続的な経済発展を通して解決できるはずだ。しかしアメリカは紛争に軍事的手段で対応し、対症療法的な対応に固執している。たとえば、アメリカはソマリアに侵攻しているエチオピア軍を支援しているし、イラクとアフガニスタンを占拠している。またイランを爆撃すると脅す一方で、パキスタンの軍事独裁政権を支持している。

 こうした軍事的行動は、紛争の原因となっている問題を解決するものではない。アメリカは大量の兵器をイラン国王に提供したが、結果的にそれが1979年のイラン革命を引き起こす要因となった。さらにアメリカはサダム・フセインのイラン攻撃を支援したが、最終的にアメリカはそのフセインを攻撃するはめになってしまった。ソビエトのアフガニスタン侵攻に対抗するためにオサマ・ビン・ラディンを支援したが、最後には彼と戦うことになった。2001年の連続テロ事件以降、アメリカはパキスタンのムシャラフ大統領に100億ドルを超える援助を行ったが、現在、不安定な同政権はかろうじて生き延びているだけである。

 アメリカの外交政策は過剰に軍事的なため、極めて非効率なものになっている。イラクの戦後復興は、民間企業ではなくペンタゴン(国防総省)によって行われている。ペンタゴンの予算、イラクとアフガニスタンの戦費、国土安全保障省の予算、核兵器プログラム、国務省の軍事支援活動資金を合計すると、毎年、約8000億ドルの資金が安全保障のために費やされている。これに対して経済開発予算は200億ドルにも満たない。

 戦略国際問題研究所の研究員のクレーグ・コーエンとデレック・コレットが、ブッシュ政権のパキスタン援助がいかに破壊的であったかを示す驚愕的な記事をワシントン・ポスト紙に寄稿している。

 両氏は、「パキスタンが貧困と人口、環境といった深刻な問題に直面しているのにアメリカの100億ドルの援助の75%はパキスタン軍に与えられている」と指摘している。また「援助の16%はパキスタンの国家予算に組み入れられてしまっており、開発や人道的支援として使われているのは残りの10%に満たない額だ」という。教育支援は6400万ドルで、学齢期の子供一人当たり1ドル16セントにすぎない。

政治・経済の人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 新型コロナ、長期戦の混沌
  • 新競馬好きエコノミストの市場深読み劇場
  • グローバルアイ
  • 賃金・生涯給料ランキング
トレンドライブラリーAD
人気の動画
ウーバーイーツ配達員の過酷
ウーバーイーツ配達員の過酷
イオン「フジ実質買収」で岡田会長が語った未来図
イオン「フジ実質買収」で岡田会長が語った未来図
採用担当者が嘆く「印象の悪い就活生」の共通点
採用担当者が嘆く「印象の悪い就活生」の共通点
ヤマト独走に待った!佐川・日本郵便連合の勝算
ヤマト独走に待った!佐川・日本郵便連合の勝算
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
統合から20年どこでつまずい<br>たのか みずほ 解けない呪縛

みずほ銀行が相次ぐシステム障害で窮地に陥っています。その根底には、3行統合から今に至るまで解決できていない呪縛と宿痾が。本特集ではみずほが抱える問題点をガバナンス面や営業面などから総ざらい。みずほは立ち直ることができるのでしょうか。

東洋経済education×ICT