園芸・ペット・LED照明 今、復興フロントランナー--大山健太郎 アイリスオーヤマ社長《下》

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言葉に、ある感慨がこもっている。大山は在日3世である。このことは昔からオープンにしてきたが、帰化したのは10年前。日本で生まれ、育った大山は、在日ゆえの差別や偏見が向けられることはなかったと言う。少なくとも表面的には──。

「銀行は人を見て貸すでしょう。取引も商品を見て買う。社長が米国人だから中国人だから買わない、というのはないでしょう。後はわかりません。好き嫌いの問題だから」

役員会を同族で固めたのは、あるいは、「守り」のための結束だったのかもしれない。だが、守るだけではない。マイナスをプラスに転換するのが大山のすごみである。「それがバネになっているのかもしれない。ああ、あの人が、という立ち居振る舞いをすれば人の見方も変わる。ソフトバンクの孫(正義)さんも同じだと思う。出る杭は打たれるが、出すぎてしまうと何の関係もない」。

大山は企業の立ち居振る舞いの大もと、企業理念に磨きをかけた。アイリスオーヤマの企業理念の3番目「働く社員にとって良い会社を目指し、会社が良くなると社員が良くなり、社員が良くなると社会が良くなる仕組みづくり」。ただの社員ではなく、「働く社員」にとって、がミソだ。アイリスオーヤマは年に3回ボーナスが出る。3回目のボーナスは決算賞与。主任以上の社員に利益の4%が還元される。「株主に払うなら社員に払う。稼いでくれたのは誰ですか。株主はちょっとも稼いでくれないじゃないですか」。

上場企業のあり方にも異議がある。かつて株主と経営者は一体化していたがいまや上場企業の大株主は投資ファンドだ。「彼らの関心は株価の上下だけ。これ投機でしょう。社員は投機家のために働くんですか」。

大山は株主・経営者・社員の3者一体化を目指している。同族企業ながら、社員もアイリスオーヤマ株を買える。ただし、購入原資は決算賞与に限定。働く社員が働いた分だけ株が持てる仕組みである。 

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