赤字国債法案通らず予算抑制の緊急事態

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赤字国債法案通らず予算抑制の緊急事態

来るべき総選挙後の主導権争いをにらみ、予算や政策をめぐる与野党間の駆け引きが激しさを増している。

国民生活に大きな影響を与えかねないのが、赤字国債発行の法的根拠となる特例公債法案の扱いだ。与野党対立のあおりを受け、9月8日に会期末を迎える今国会中に同法案が成立しそうになく、今年度中に発行が計画されていた赤字国債約38兆円分が宙に浮いている。

政府は今年度、総額で約174兆円分の国債を発行する予定だ。このうち、市場で金融機関や投資家などに売る利付国債が120兆円分あり、その一部が新たな借金となる赤字国債約38兆円分だ。一方、残り約80兆円分は過去に発行した国債償還のための借換債などが対象で、こちらは通常どおり発行される予定だ。

120兆円分という巨額の国債は一度に発行されるのではなく、投資家などが買いやすいように、4月から毎月10兆円ずつ、東日本大震災の復興予算のための復興債や財投債、借換債などを組み合わせて、一定ペースで発行している。

しかし、特例公債法案38兆円分の審議がストップしているため、このまま成立しなければ、国債発行がまったくできない「空白」が生じてしまう見込みだ。

この問題は今後、国債市場にも影響を与える可能性を否定できない。今のところ、金利に大きな変動はなく、投資家の間では「10月半ばには法案は成立するのではないか」との見方が少なくない。だが、特例国債法案の成立がずれ込めばずれ込むほど、空白時期の発行分を取り返す必要性に迫られる。国債発行が10兆円を大きく超える月が出るため、市場が消化しきれず金利が乱高下しかねない。 

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